森羅万象諸行無常

好きだ、の森羅万象諸行無常のレビュー・感想・評価

好きだ、(2005年製作の映画)
4.5
「誰も知らない」とかガス・ヴァン・サントの作風に似てて静かで真摯なドキュメンタリーぽい仕上げ。りんごの皮を剥く音含めあらゆる音を丁寧に集音して流し続け余計なBGMは無い。駅で別れた後の大事なセリフ1ヶ所は全ての音を消す。天空を何度も映し台詞は少なく時間はゆったりリアルに。江國香織の世界観と合いそう。
思春期男子は性に興味はあっても現実的には臆病で逃げ腰で興味無いふり。思春期女子は初歩だけ積極的に近づけるが肝心の所はウブで繊細・ぎこちない・言葉足らずというかほぼ無口という不器用さを露呈するばかり。彼の真意を知りたいという想いは抑えられない。二人とも「お姉ちゃん」を話すキッカケのネタにするが、すぐに何を話して良いか分からないようになる。無口の時間こそが心地よい緊張感とリアリティをこの作品に生む。
中国の「初恋の来た道」とは積極性に雲泥の差があるがいかにも東アジアらしい作品。
宮崎あおいさんの演技はずば抜けている。特に河川敷で4歳くらいの子供がやっちゃうような唐突のキスに至るシーンは全体が長いが最初に座るその瞬間から少年が去った後まで目の動き・表情・体の動き全てが恐ろしいくらい生々しくずっと息を呑む。我が身の全神経が泡立つ。この長めのシーンはずっと忘れないだろう。
この映画は客を選んでるというかヒットを狙ったようなバカや凡人でも理解出来る面白さがほぼない。大衆受けしないはず。なので人によって大きく評価が分かれる。真面目で繊細な人なら〇。まちがってもオラオラ系とかギャルとか口数多い人は観ないが良い。

森羅万象諸行無常さんの鑑賞した映画