天パーマン

エル・スールの天パーマンのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
-
前作同様に影が印象的で、終わりゆく父とこれから始まっていく娘との対比となっている。両者共に苦悩があり、克服できなかった者とこれから克服していくだろう者という対比でもある。
その影はメタ要素の他に画的に美しく感嘆とする。
美の傍らに影を潜めているエリセの世界観は残酷だが心地良い魅力がある。

父は郷愁に想いを馳せるが、その地は出てこない。エリセは原作通り南を映すつもりだったようだが、撮られなかったことが却って想像を掻き立てられる。具体的な故郷ではなく望郷という概念として各々の観客にも理解しやすい。

絵画のような作品は物語が退屈になるものが多い中この作品は話が筋立ててあり、随所に見られる不穏な演出がそのまま方向性を示しており一貫性がある。
非常によくまとまった物語になっていてとてもバランスの良い傑作となっている。
天パーマン

天パーマン