キットカットガール

マーニーのキットカットガールのネタバレレビュー・内容・結末

マーニー(1964年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

何だろう、結構雑なところがあったり、展開に強引さも感じたりして、初めは薄いかなと思っていたけれど(泥棒に恋しちゃった男のラブサスペンス??と)、実際にはヒッチコックらしいサスペンスで、色々と過去に鑑賞した彼の作品を彷彿させる演出があり面白かった。

冒頭の顔を写さない演出は『見知らぬ乗客』、母親がマーニーを起こすシーン(初めの)の部屋の入り口に立っている姿がシルエットになっている演出は『サイコ』、赤いエフェクトが映像にかぶる演出は『めまい』云々。

個人的にはマーニーが会社の金庫からお金を盗み出すカットの構図が好きで、部屋の中のマーニーと外にいる清掃員のそれぞれの行動が一つの画面に収められているのが、ハラハラを高めてくれた。

ストーリーは初めに抱いた軽いサスペンスというよりは、むしろ社会派に近かった。近頃、ハリウッドではMeToo運動、日本ではジャーナリストのレイプ被害など、女性の性被害に関する問題が浮き彫りになっている為、主人公マーニーの現代にも通じるキャラクターが印象に残った。
劇中では何事もないかのように流されていたけれど、ショーン・コネリー演じるマークがいきなり、そしてさりげなくマーニーにキス等をしていたのは強制わいせつに該当しないのかと私は気になってしまった。
加えて、女性がお茶を入れ、ケーキを切るのが当然という思想、子供に対する性的虐待、未婚の母、マークの行為は脅迫/共犯に該当するのか、犯罪を行った者が裁かれずにいて良いのかなど、観ていて考えさせられる興味深い点も幾つもあった。

しかしながら、こういうセクハラ関係の物語をヒッチコックが監督するのはとても意外で驚いた。やはり、ヒッチコックと言うと、本作のヒロイン:マーニー役のティッピ・ヘドレンへのセクハラや束縛のイメージがある為、観ていて何処となく違和感を覚えた。まあ、この件に関しては『ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女』で消化しようと思うけれど....。

纏めると、好きか嫌いかと質問されたら、本作はどちらかというと好きなタイプの作品ではないけれど、最後までマーニーの秘められた謎に引きつけられ集中して鑑賞出来た為満足。

✴︎本作のヒッチコックのカメオ出演はホテルの廊下。比較的地味だった為見逃しかけた。

✴︎『グレース・オブ・モナコ』でヒッチコックがグレース・ケリーに本作のヒロインをオファーしていたのを思い出し、グレース・ケリー版も観てみたいと思った。

✴︎ ティッピ・ヘドレンの娘がメラニー・グリフィスとは知らなかった。つまり、ダコタ・ジョンソンは孫。凄い家系!