りょうた

デリカテッセンのりょうたのレビュー・感想・評価

デリカテッセン(1991年製作の映画)
3.8
『アメリ』で知られるジャン=ピエール・ジュネの初期作品。

冒頭は包丁を研ぐ手元を写したシーンから始まる。
ルイゾンという男は精肉店の上にあるアパートに住むことになる。カタツムリとカエルと暮らす老人や自殺を図り続けるオロールなど、住民は個性豊かだ。精肉店の店主は人肉を売りさばいており、彼が次に目をつけたのはルイゾンだった。店主の娘ジュリーはルイゾンを逃してやるために奮闘する。

彩り鮮やかな『アメリ』とは違い、濁った暗色で統一されており、一貫して不穏な空気が漂う作品となっている。唯一明るさがあるのはヒロイン、ジュリーの部屋だけである。

彼の他の作品にも見られるように、個性的で強烈なキャラクターが登場する。『アメリ』や『天才スピヴィット』ではナレーションがその人物の個性を語るシーンがあるが、この作品では自然に描かれてゆく。其々の個性は一見突飛なもののように見えるが、普段の生活では見れないもの(他人のプライベートな空間で垣間見えるものだと考えるから)だからこそ、至って普通に思える。

テーマ自体は陰鬱なものの、彼の手にかかれば、どこか喜劇的な雰囲気が醸し出される。
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