ひでぞう

姉妹のひでぞうのレビュー・感想・評価

姉妹(1955年製作の映画)
4.2
 とても良い。人間の良心というものを考えさせられる。現在は、すでに「良心」という言葉は死語になっているのかもしれない。斜に構えて、冷笑することがネットの作法になっているとすれば、「良心」など、顧みるようなものにはならないだろう。
 しかし、それでも、ここで描かれているのは、決して失ってはならない戦後社会の「良心」なのだ。姉・圭子と妹・俊子とを対比的に描いている(容姿も、淑やかで長い髪の姉、活発でショートカットの妹)ようにみえるが、二人に共通しているのは、他者への思いやり、それも、理不尽な抑圧のなかで必死に生きる他者への優しさであろう。それを基盤にしながら、姉は理想を理想のままに、現実的ともいえる選択をし、妹は理想を現実にかえようと決意していく。この決意が、妹「コンチ」のキャラクターとあいまって、まぶしく魅力的に思える(もちろん、姉の淑やかな美しさにも惹かれる、男性から見た女性の理想的な美しさ)。
 さすが、監督の家城巳代治であり、脚本の新藤兼人である。こうした映画の系譜は、どこに見られるのだろうか。ケン・ローチのいくつかの作品を思い浮かべる。
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