残像

私の殺した男の残像のレビュー・感想・評価

私の殺した男(1932年製作の映画)
4.3
映画全体が、戦中から戦後へ、そして日常を取り戻すまでのグラデーションになっている。

とくに音楽、というか音の設計がすばらしいのは、冒頭のシークエンスを見ただけでわかる。まさに戦時下の音、音楽が重ねられ、その短い時間の中で戦争の高揚と激しさ、そしてその後の虚しさまでをも感じさせる。

画面を見ても、この時代には珍しいアップでつなぐカット割や、大がかりな移動撮影などが大仰になりすぎずしかし非常に効果的。もちろん階段や扉といった舞台装置の使い方も素晴らしい。

個人的には、亡くなったウォルターの部屋のシーンが全て良かった。撮影から小道具から個々の演技に至るまで。

そしてラストは予想どうりに音楽のご褒美が待っている。いやあ、映画っていいなあ。
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