ひげしゃちょー

回路のひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
4.5
終始不気味な演出で普通に会話してるシーンでさえ不穏に思える。 この緊張感を生み出せるのは黒沢清ならでは。 『CURE』でも病院へと向かうバスの中から見える風景が不思議な感じだったけどこれもそう。車の中のシーンが妙に違和感がある。 ホラーなんだけどでかい効果音とともに幽霊を登場させてびっくりさせるような王道な演出はせずにその姿ははっきりと見せない。見せないからこそ恐ろしい。 そして何と言っても武田真治演じる大学院生の台詞が興味深い。「向こう側の世界で溢れた幽霊はどうするか?こちら側に来るしかないのでは?」という仮説。 そして、ラストに向かってだんだん生者が向こう側に侵食されていなくなっていく終末観がお見事。 「いなくなった者たちの元に帰った方が幸せなのかもしれない。ただ、私たちはいけるところまでいくことを選択した。最後にできた友達と一緒です。私は今、幸せです。」というラストのナレーションが印象的。 生とは何か?死とは何か?人間とは何か?色々と問題提起をしてくれる高次元のサスペンス・ホラー。