ほおづき

クワイエットルームにようこそのほおづきのレビュー・感想・評価

4.0
仕事が多忙でわけもわからず隔離病棟に入れられた主人公が、個性の強い人達と過ごしながら自分を取り戻していく姿を描くブラックコメディ。
嘔吐物とかグロい食事とか蕁麻疹とか・・・食欲無くなる表現は多いけど、精神科っていう重苦しいモチーフをコメディ仕立てにおもしろおかしく描いてる作品。


この映画観てると、精神病の人とただストレスMAXでおかしくなっちゃった人との間には明確な線引きはあるのかな?って考えてしまう。実はこれは精神病の定義の曖昧さの恐ろしさを表現したものすごく深くて恐ろしいおはなしなんじゃないかって思っちゃうw

この映画、病院側の患者の扱い方の描写が『チェンジリング』と似ていて患者をあんまり人間扱いしてないんだけど、あちらの作品は”マトモ”な人が警察権力のせいで精神病院に入れられちゃうおはなしなのに対して、こちらはきちんと医師の判断で精神病院に入れられちゃっている。
診断がぜんぜん違うのに行われてることは同じってところが怖い。



全然関係ないけど『みちくさ日記』という漫画があって、14歳で漫画家デビューした著者が、重圧に耐えられず奇行を繰り返し始めたため、親が医師にすすめられるがまま精神病院に入れてしまったという物語。

そこに描かれるのは、ごく普通の女の子が自分は精神病なんだと言い聞かせながら、社会で障碍者扱いされながら生きていく倒錯しきった世界で、それがすごく衝撃だった。精神病患者として生きなければならなくなったこの作者は、両親が医者の言うことを鵜吞みにしなければ、同級生と何もかわらない青春時代を送れたのかもしれないと思ったから。

逆に言えば、ちょっとしたことで誰もが患者になってしまいかねないってことなのかもしれないけど、現代の医療では解明できないものにそれっぽい病名をつけて、精神診療科に追いやって蓋をしているだけなんだなぁって思ってしまう。
この映画も、そういう怖さを描いてる映画なんじゃないかと勝手に思ってる。