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遠雷のJeffreyのレビュー・感想・評価

遠雷(1981年製作の映画)
4.0
「遠雷」
‪冒頭、トマト農園。栽培する青年、都市化の波。トマトを口にほおばりキスをする男女、ビニールハウスでの性行為。お見合い、青から赤へ熟すトマト、田舎から都会へと変わる町…本作は宇都宮を舞台に都市化の波に流される人々を描いた根岸吉太郎のATG作品で81年に製作…同年には日活ロマンポル‬ ‪ノから“狂った果実”も撮っている。余談だが遠雷と言えば中島みゆきの曲が真っ先に思い浮かんだが、本作を初見した際に余りの傑作に遠雷=映画の、になった。物語はハウス栽培する青年の周囲の環境と都市化が進み崩壊してく共同体を映す。既に東 陽一のATG作サードで知った役者、永島敏行が本作の主演を‬務めてる。そして石田りえのヌードが必見。これは中々の青春ドラマで悲劇の連鎖が青年を襲う三つの出来事、肉体関係を持った人妻が幼馴染と駆け落ち、父の逮捕、虫によりトマトが全滅と…その後の結婚式の下りに歌を歌いだす場面、殺人の告白をする友の長回しのシーンは緊張感漂う。そして終盤、この映‬画の一番の開放感を感じる土地を買いに来た不動産屋を猛烈な勢いで追い返す青年と虫にやられて全滅したトマトを夫婦で燃やすシーン…そして遠くで雷が鳴っている音と描写、ムードが漂う音楽が頃狭しに流れる本作は兎に角活力に満ちた人間ドラマで、それでも農を選択する青年の姿に感動する素晴らしい一本だ。‬立松和平の小説を根岸吉太郎が映画化した80年代のATG傑作青春映画。本作を見る度に中島みゆきの遠雷が頭に流れる。監督自体も中島の夜会などを手掛けている。本作は都市化が進む時代に農業にやり甲斐、拘りを持つ青年の生き生きとした生命力を良き田舎町の風景と共に描く大好きな一作。
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