私が見た範囲、タウログのエルヴィス映画は、有名な『ＧＩブルース』『ブルー・ハワイ』は冗長、『ガール！ガール！ガール！』が丁寧な仕上がりでベスト、他はかなりキツイといった印象なので、後期映画だし期待していなかったが、これはユニークな仕事だ。
カメラマンのエルヴィスが、浜辺で出会った女ミシェル・ケリーの家で一夜を過ごす。目覚めると、家にはケリーの元恋人たちが入れ替わり出入りし、ケリーが複数の名前を持って生きる女なのが分かる。エルヴィスから仕事と家を無理やり奪い、自分の家に住まわせてしまう謎の女ケリー。映画はヨーロッパ映画風シュルリアルな恋愛劇のアメリカ喜劇化で、これはエルヴィスの最も奇っ怪な作品だろう。つきまとうケリーに影響を受けるように、２つの会社のカメラマンを掛け持ちして自ら分裂していくエルヴィス。ハッピーエンドは無限の悪夢の始まりでもある。エルヴィスとタウログがこんな奇妙な映画を撮っていたとは驚いた。
テレビ『68カムバック・スペシャル』以後のエルヴィス劇映画でも、この『バギー万才!!』や『トラブル・ウィズ・ガールズ』はそれまでにはない意欲作・異色作で、契約の消化試合というのではない。

原作者のダン・グリーンバーグはフリードキン『ガーディアン／森は泣いている』の原作『ナニー』を書いた人だそう。

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