三樹夫

名探偵コナン 時計じかけの摩天楼の三樹夫のレビュー・感想・評価

3.3
原作は48巻ぐらいまで持っていて、劇場版は『銀翼の奇術師』の序盤らへんまでは全部観ていた。小学生の時は灰原哀に狂っていたし、服部平次初登場回のポケットに鍵入れるフェイクトリックや「イラストレーター殺人事件」のベランダから死体落とすトリックを実際にやってみたことあるので、わりかし元コナンガチ勢かもしれない。コナンガチ勢っていっても、昔は犬夜叉の後の月曜19時半から放送されていた時は結構な頻度で関西では視聴率20%近くまでいっていたし、コナン観ている人って普通に多いのではと思う。ちなみに今ではネタにされているOPのパラパラだが、当時は読売テレビの朝の情報番組で今度はコナンがパラパラを踊りますとか大真面目に特集されていた。

劇場版一作目だがコナン劇場版のフォーマットはほぼ出来上がっている。犯行動機が芸術家の美学であり、ミステリーは捨てて主に爆発によるアクション推しで、「しんいちー」「らぁーん」のお姫様を助けにくる王子様などの制作当時からしても古いベタベタなことをやる。このフォーマットは基本的にこれ以降も繰り返される。
白鳥刑事初登場でこの時は声優は塩沢兼人だが、THE塩沢兼人というあまりにも怪し過ぎるミステリアス演技で犯人のミスリードという役割を担っている。CV塩沢兼人の白鳥刑事に関しては、塩沢兼人のミステリアスボイスを活かしてこの後の『世紀末の魔術師』でも、「エッグならありますよ」と凄まじく怪しくねちっこいミステリアス演技で、何か怪しいキャラとして機能している。
初期のお約束としては、読売テレビ製作のためか大阪芸人がゲストで出ており、今作では2丁拳銃が次作ではやすよともこが出ているが、これが後に一般人の子供が声優や、縁もゆかりもないだろみたいな芸能人がゲスト声優へと変化する。

この映画のミステリーに関しては根っこ→ネコ、××の×などミステリーというよりクイズになっておりガバガバもいいところ。証拠とか何もないけどカマかけて自白したらOKというガバガバ具合に、犯人も誰かすぐ分かるし。つーかモリアーティって。ただ原作自体がミステリーはわりかしガバガバとなっている。私は「イラストレーター殺人事件」のトリックを個人的に再現したことあるが、女性とはいえある程度体重がある死体を支えつつロープをベランダから玄関までピンと張るの1人ではほぼ不可能といえるぐらい難しいし、ドアに釘が引っかかっていたら絶対に気付く。またいくら完成度の高いトリックだったとしても喋っているだけの推理シーンで画が死んでしまうので、映画とミステリーの相性はそもそも悪いというのがある。なので映画化にあたってミステリーではなく爆発などのアクションに振り切るのは正解のように思う。
劇場版コナンは他作品が元ネタになっていることが多いが、この映画の未だ解けない謎として、『新幹線大爆破』か『スピード』のどっちが元ネタなんだろうというのがある。次作『14番目の標的』で人質の足を撃つという『スピード』が元ネタのことやっていたので、今作の60キロ以下だと爆発も『スピード』が元ネタなのかな。「わかりましたよ警部」からの毛利小五郎がことごとく推理を外すのは市川崑版『金田一耕助』シリーズの加藤武の「よし、分かった」が元ネタか。
赤か青かという、爆弾でどっちのコードを切るかというのをやっているが制作当時の90年代後半にしても古い表現ではある。

コナンの負の面としてどうしても漂うマッチョ主義があるように思う。典型的なのがお姫様を助けにくる王子様という構図で、いくら蘭が空手が強いといってもお姫様を助けにくる王子様という構図の否定にはなっていない。空手が強かろうが結局女性に頼られ女性を助ける男性というマッチョな発露がある。作品の根底にあるのが幼馴染をずっと待ち続ける女の子という演歌の歌詞みたいな世界で、そういった演歌の歌詞はたいてい男が作詞しているし、この作品も幼馴染をずっと待ち続ける女の子を描いているのは男の作者なわけだしで、男にとって都合のいい女性感がある。
コナンの特徴として女性ファンが多いというのがあるが、女性ファンの多さは少なくとも20年以上前から(少なくとも2000年には)顕著だったように思う(そこからさらに女性ファンが増えたというのもあるが)。ベッタベタなラブコメやったりキザ過ぎるセリフがあったりで、どういう風に思っているのかコナンファンの女性に一回聞いてみたことがあるが、リアルにあんなキザなこと言われたらドン引きするけどアニメだったらカッコいいと言っていた。後あまり蘭は人気が無く、コナンファンの女性曰く一途アピールがウザいと言っていた。
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