13unta

WANDA/ワンダの13untaのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
4.5
表現について語り継ぐためにどうしても過剰にピックアップされてしまうものがある。「作家の意図」や「時代の必然性」と呼ばれ、歴史に刻まれるに値するエクスキューズを付与する。

「映画が嫌いだった」と云う彼女の表現。

ぼくらには懐かしい、90年代冷笑的な手触りが、時代の要請もなく個の中から確かに現出していた驚き。冒頭の長回しや、平気でイマジナリーをポンポン飛び越えるカメラワーク。計算し尽くされたそれらではなく、なんならたどたどしく、機材の扱いや現場進行の事故性すら疑われる画面に釘付けになっていることに気付く。

いかなるイデオロギーも過剰に個の感情を先行すれば多くのプロパガンダ同様退屈になる。そういう意味で退屈な映画が溢れた現代から観返した彼女の表現。個に沈みゆくラストカットは、これまで観たどのストップモーションより美しかった。
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