一休

メトロポリスの一休のレビュー・感想・評価

メトロポリス(1984年製作の映画)
5.0
SF映画好きのオイラは、スターウォーズショックの起こる前から古いSF映画の虜で、【禁断の惑星】だの、【4Dマン】だの、【蝿男の恐怖】だの、【絶対の危機】だのを好んで観ていたのだが、さすがに少年の頃はこの映画の存在を知らなかった。
しかし、スターウォーズでC3-POがこの映画に出てくるマリアの形を真似たものであるということを知った時点で、非常に興味をそそられる作品となったわけだ。
時は流れて、1984年。スターウォーズも3部作がそろった所に、この映画が公開されると、当時の映画雑誌に書かれていた。
なんでも、アメリカで見つかったフィルムを観たジョルジョ・モルダーが惚れ込んで、著作権を買い取り、彼の仲間に観せてそれぞれの選んだシーンに音楽を付けさせたということだ。
田舎者のオイラには観る事の出来ない作品だろうと思っていたのだが、須貝ビルB1のテアトロポニーで上映される事が判明し、高校生料金700円を支払って観たものである。

なんというか、これほどの映画は観た事が無かったというのがその時の感想だ!
なんと言っても、その後20回以上も同じ劇場で観てしまったぐらいだ。( ̄ー ̄)ノ
上映されたものについては、ジョルジョ・モルダーのオープニング曲からサイクル・ファイブの曲で始まり、ボニー・タイラーやアダム・アンの曲でストーリーが進み、フレディー・マーキュリーが「Love Kill」で場面を転換して、またモルダーの曲でエンディングへと盛り上げていっている。
いや、単に音楽映画というだけではなく、その'80年代ポップスが画面にピッタリと合わさっているので、目を見開いたままスクリーンから離せなくなってしまうというのが本当のところだ。

特に、熱にうなされた主人公のフレダーが見る夢の中で、マリアが淫靡な踊りを披露する場面では、それまでの清純無垢な少女と男を手玉に取る淫売女を一人の女性が演じているとは思えない場面転換で、それに続くフレディの曲も観るものの心を鷲づかみにして離さない。
このフレダー役のアルフレート・アーベルが、日本の名脇役であった故・堺左千夫さんに似ているのは善しとしよう。(←言わずにいられなかったw)

映画が始まる時点で、フリッツ・ラングの言葉が紹介されている。
曰く「わたしは何よりもまず視覚人間だ。いつも自分の目で何かを感じ取る。残念ながら耳はとても鈍感であった。」。しかし、この映像を観ていると、これだけのミュージシャンがこれ程の音楽をこの映画のために書き下ろしたという事が分かるほど、光と影の作り込みが素晴らしいと感じられる。
何故って、フィルムに色が付けられてはいるが、基本的に白黒映画なのだから、これこそが光と影のマジックと言えるであろう。

1926年に作られたこの映画は、当時の帝国主義的各国では上映中止や検閲で短くされたモノしか公開されなかったということだが、半世紀を経て生まれ変わったこの映画を、学校をサボり、親を騙くらかして、20回も映画館で観たことは、自由な時代に生まれてきて良かったと思う一休であった。
一休

一休