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たそがれ酒場のENDOのレビュー・感想・評価

たそがれ酒場(1955年製作の映画)
4.2
グランド・ホテル形式というには余りにも猥雑だがその中に戦前/戦後の矜持がある。軍隊の規律を忘れられぬ東野英治郎と加東大介の関係は余りにグロテスク。だが自己肯定をしない限り戦後を生きていけなかった悲しみもある。対して若者たちへの視線は優しく強い肯定感で送り出す初老の男たちを演じるのはかつての内田吐夢の盟友。宇津井・丹波・野添の恋の鞘当、津島とパトロンの痴情のもつれ、丸山の引き抜きなど次々に事件が流転していき飽きさせることはない。閉店後の閑散とした店内で披露されるオペラは戦争への悔悟を反省し乗り越えようとする戦中派への慰めのように響く。大衆酒場での階層を超えた玉石混淆に在りし日の日本の寄る辺なさと逞しさを垣間見て泣く。戦前の流行歌としての『カチューシャの唄』と『丘を越えて』
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