いち麦

大病人のいち麦のレビュー・感想・評価

大病人(1993年製作の映画)
4.0
「大病院」ではなく「大病人」。今作は監督のいう通り〈病院案内〉や〈癌入門〉的な情報的側面を拭ったアプローチになっていた。確かに、告知や終末医療の現場状況が今は勿論、当時でも大分違っている様に思えたし、大袈裟で嘘っぽい病院内の演出も多い。だが悲哀と笑いに溢れた三國連太郎の演技が素晴らしく、津川雅彦との掛け合いは名場面の連続でそこが何よりも見処だった。特に武平が医師と友情を結んでいく過程…本音を衝突させる対決場面、告知の場面、最後の方針定めの場面は名台詞がやり取りされ、今見ても引き込まれる。劇中映画撮影場面が物語の現実と重なる山場も揺さぶる。伊丹十三作品にしては珍しく特撮+VFX映像の場面があった。臨死体験で出てくる、舟型で揺れる裸の少女は強烈で長く記憶に残るもの。

《覚え書き》
配役名 大病人:向井武平、その妻:万里子、愛人:神島彩、医師:緒方
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