普通なら重く暗い内容になる所を、絶妙のギャグセンスで見事にエンタメとしていて、テーマもしっかりとしている見事な作品。
伊丹節を堪能できる。
また、出演者がみんなレベルが高くてこれも見どころだろう。
三國はもちろん貫禄の演技だが、対する津川の軽さのある受け流しが名人芸と言えるだろう。
臨死体験の映像も不条理感があり、絵自体も年代と日本映画で初めてデジタル合成を使用したことを考えてもレベルが高いものだと言える。
それと、クライマックスで演奏されるカンタータ「般若心経」が素晴らしい。
あとで調べて分かったが、作曲があの黛敏郎だと知り納得した。
泣かせるシーンやエキサイトしている所にさっと入り込み、その熱量を奪う気持ちの良いギャグは伊丹監督の才能の現れだろう。
エンタメとしてもテーマの掘り下げとしても観応えのある一本。
余談。
臨終に立ち会っている人たちから笑い声が漏れる。
今作では本人がさりげないギャグを飛ばし、全員がクスッとしたところで、ご臨終となるのだが、そのギャグセンスの良さに驚いた。
でも、なぜかここにすごいリアリティを感じるのは私だけだろうか。
映画では観ている者がとろけそうなラブシーンとか、号泣しそうな別れのシーンなどはよくあるのだが、実際にそんなことある?
不謹慎とは分かっているが、そんなシーンでくだらないギャグを誰かが口走り、雰囲気が一変、って方がありそう。
伊丹監督はそこら辺の匙加減がじつに上手いと思う。