櫻イミト

禁じられた情事の森の櫻イミトのレビュー・感想・評価

禁じられた情事の森(1967年製作の映画)
3.5
前に町山智浩さんがトラウマ映画館で取り上げていたのを思い出して鑑賞。ゲイ指向を隠して生きる軍人(マーロン・ブランド)の破綻を描く愛の倒錯ドラマ。正直言ってへんてこな映画、なのに出演陣は豪華でけっこう楽しめた。弱いのにナルシストという屈折した軍人を、ブランドが張り詰めたテンションで演じきっている。鬱屈した妻を演じるエリザベス・テイラーは寝姿も濃いアイメイクをしていて毒々しかった。ラストの異常なカメラワークはよく決行したなという感じで、確かにトラウマ的に記憶に残るだろう。

ブランド演ずる軍人の姿に三島由紀夫を連想してしまい、もしや本作を観ているのではと調べてみたら、やはり言及していた。しかもかなりの酷評。同じ文章で同年の「サムライ」(1967)を絶賛していた。
「『禁じられた情事の森』は、可能性のない肉慾ばかりがひしめいているはずの沈黙を、全部ただカラッポに表現していた。どこかのデパートへ御歳暮を頼んで、うけとった人が箱をあけてみたら中はカラッポで、贈り主にこれを打ち明けるべきか迷ったという実話があるが、あの映画は正にこんなカラッポの御歳暮だったと思われる。」
本作の音楽は三島の盟友・黛敏郎が担当している。”お歳暮の送り主”は黛のことだったかもしれない。

※本作の原題は「Reflections in a Golden Eye(黄金の眼に映るもの)」。これを知らないと本編に出てくる孔雀の絵の意味がわかりにくい。原作者はアメリカの女流作家カーソン・マッカラーズで、デビュー作「心は孤独な狩人」も、翌年「愛すれど心さびしく」(1968)として映画化されている。
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