櫻イミト

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章の櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.1
門出(DEMON)+凰蘭(ORAN)=ドラえもん(DORAEMONN)、大場圭太はオバケのQ太郎のアナグラム。

「前章」の興行収入は非常に寂しい結果となった。
今年公開のアニメで比較すると
「デデデデ~前章」4億
「ゲゲゲの鬼太郎」27億
「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」100億
「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」135億
(※2024/5/24現在)

【あらすじ】
3年前の「8.31」。突如、東京の上空に巨大な宇宙船が出現し大災害が起きた。以降、状況は停滞するが、落下した宇宙人“侵略者”が次々と目撃され自衛隊は無慈悲な駆除活動を実行していた。門出と凰蘭は同じ大学に入学しオカルト研究会に入部。まったりと青春を謳歌する。巷では、
・過激派青共闘・・・独自に“侵略者”狩りを続け救世主を志向
・市民団体SHIP・・・“侵略者”を擁護しデモ活動
・大手企業S.E.S・・・政府要人脱出用の巨大箱舟を開発
そんな中、宇宙船が傾き煙を噴出。滅亡へのカウントダウンが始まる。凰蘭と親密になった“侵略者”大葉圭太は、宇宙船を自爆から回避しようと一人飛び立つが。。。


かなり興味深い作品だった。完成度も高い。「終わりなき日常」の系譜の中でこれほどリアル日本のカタストロフィを描いたアニメは今までに無く、サブカル史に刻まれる一本と言える。ただ、原作から大きく改変した終わり方は、若い世代以外には刺さりにくいとも感じられた。社会との関わりは否定的に描かれ、関わらない女子二人を全肯定して物語は終わる。

「大丈夫だろ たぶん。今までだってどうにかなったんだから。」

凰蘭の父親の一言、からの破壊描写が壮絶。流れる劇伴は原作どおり、でんぱ組.Incの「あした地球がこなごなになっても」(作詞:浅野いにお)

原作は2014年~2022年の連載。東日本大震災を受けて始まりコロナ禍に終了した。終盤の主役は原作者・浅野いにお(現在43歳)自身を投影したと思われる門出の父、小山ノブオだったが、本作では丸ごとカットされている。結果、原作の厭世観やアイロニーは薄れ、今を生きる若者の「友情の絶対性」が強調されていた。

映画でのストーリーも原作者浅野いにおのオリジナル。おそらくは主演の二人、あのちゃんと幾田りらに浅野が感化されたのではないか。時代のアイコンである二人に厭世観やアイロニーはそぐわない。希望が見えないと言われる令和日本でも、若い世代は未来に向けて生きていくのだ。つまり本作は若い世代に向けられており、原作にあった浅野(40代)の自己言及要素は切り捨てられている。そのぶん文学的な普遍性も薄れたように思われるが、令和の気分を写し取った作品になったことは高く評価したい。

世界線移動によるやり直しには「シュタインズ・ゲート」(2011)を。セカイ系的な内容には「天気の子」(2019)を。カタストロフィ描写には「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(2020)を連想した。東日本大震災後の日本をサブカル的に包括した一本とも言える。
櫻イミト

櫻イミト