ゴンベ

宇宙大怪獣ギララのゴンベのネタバレレビュー・内容・結末

宇宙大怪獣ギララ(1967年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

序盤はなかなか新鮮で面白い。グループサウンズ風味の軽快なテーマソングから始まり、東宝の喜劇路線ともまた違う程よく気の抜けた雰囲気の中、主人公とヒロインたちの三角関係プロットの導入を手際良くこなしつつ、月面檜風呂などのユニークな風物を次々に見せて楽しませてくれる。無重力描写等も良くできていて、評判やたら悪いけどけっこう頑張ってるじゃないの、と40分ほどは機嫌よく見進められる。

だが主人公たちが地球に帰還した辺りでふとタイムカウンターを見て、やおら不安な気持ちになってくる。88分の映画がもう折り返し地点を迎えようとしているにもかかわらず、肝心の怪獣が未だ鳴き声や足跡さえ示してくれないのだ。だが心配することなかれ、観客の不安を察したかのように、その瞬間全く唐突にギララは現れて、なかなか見応えのあるデザインの身体を大いに動かし、威勢の良い暴れっぷりを見せてくれる。どうも各地のエネルギーを集めて回っているようだということで、その吸収を遮断するギララニュウムなるふざけた名前の物質の存在を突き止めた主人公たちはまたもや月を指して飛び立っていく。

以降、主人公たちが船内であーだこーだ言うパートと対策本部の偉い人たちが壁の地図を眺めながらあーだこーだ言うパート、そして3分に1回ほど思い出したように挿入されるギララの破壊シーンというこのサイクルが何度も何度も繰り返される。主人公たちはギララニュウムの件よりは三角関係プロットの展開に忙しく、ギララは発電所巡りをしたり空を飛んでみたりと必死で間を持たせようとしてくれるものの、なぜかBGMがひどく耳に障るブザー音みたいな主題が5秒間隔で繰り返される単調極まりない地獄の責め苦のような曲一つしか用意されておらず、仕舞いにはあれだけ早く見たいと思っていたはずのギララが映るたび、画面を早送りしそうになるのをじっと堪える羽目になる。一曲しかなくても敢えて流さないでメリハリを付けるぐらいできるだろう。画面にギララが映るたび義務みたいに流すのマジで止めろ!

ようやく主人公たちが地球に帰還し、ギララそっちのけで三角関係プロットを畳みに掛かる頃には、とうとう人間パートですらこのBGMが掛かるようになる。いよいよヤバい、限界だ、勘弁してくれ、という登場人物たちの危機感を生理レベルで観客に共有させる非常に効果的な演出である。止めろ! ヒロインが足を挟まれて動けないとかもうどうでもいい! 早く話を終わらせるんだーッ! というこちらの悲鳴も虚しく、主人公たちは濃縮ウラン燃料に怪獣が迫る最中に十人近くの人員を割いてヒロインを救出し、他に誰もいないだだっ広い一本道なのに敢えて追いつかれそうで追い付かれないギリギリのスピードを探りながらの追い掛けっこを演じたりした後、耐えきれなくなった僕がちょっと横になっている間に起こったらしいなんか色々を経てついにギララをカプセルに閉じ込めることに成功するのであった。誰か合間に何があったのか教えてください。

色々言ったが、序盤は普通に楽しいし、破壊シーンは無理しないで適度に早送りするか無音にして見ればまずまず面白い映画である。というか自分があの破壊BGMと特別相性が悪かっただけなのかもしれない。ちなみに個人的に思う一番の見どころはどこかと言うと、ギララがあまりに精力的に暴れ回るので、対策本部の壁に貼られた被害地域の地図がどんどん貼り足されていき、やがて指示棒持った人がそこそこ高い脚立に乗って報告をし始めるくだりだ。これは文句なしに面白かった。
ゴンベ

ゴンベ