おこのみやき

カナリアのおこのみやきのネタバレレビュー・内容・結末

カナリア(2004年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

鮮烈な映画。

偶然出会った光一と由希の逃避行のような、はたまた冒険のような復讐の旅のシーンと光一が教団に入っていた時の回想シーンが交互に映る。
光一も由希も「社会は嘘つきだ」ということを悟っていて、どこか諦観している大人のようである。それでも、生きていくことに対して強い意志を持っている。

結局、光一は本気でニルヴァーナを信じていたのかどうか。
彼はニルヴァーナを信じていたというよりも母親を信じ、母親を通してニルヴァーナを信じようとしていたのだろう。
しかし、母親は犯罪者となり、光一は妹と離れ離れになる。なんとなくおかしいのではないかということは自覚していたし、由希からも何度も指摘されたが、それでも経を唱えることでなんとか自分を保ち、母親を信じようとしていた。

だからこそ母親の自死は光一を何重にも裏切ることになる。
しかし、そこで打ちのめされる光一に由希が「うちがあんたの妹連れてきたる。連れてこられへんかったら、うちがあんたと死んだる」と一手に復讐を引き受けたことは、彼女も父親やどうしようもない社会に対して怒りを抱いているということのあらわれであると同時に愛情がわいていたからだろう。
そのような由希の言動を見て、光一は生まれ変わったのか、神になったのか白髪の姿で登場する。なんだか突然のオカルト的な展開に腑抜けしてしまったが、記憶に残るラストになった。