まぬままおま

転校生のまぬままおまのネタバレレビュー・内容・結末

転校生(1982年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

大林監督尾道三部作第一作。

転校生と転向性。転じて、生の好転。

一夫が一美に、一美が一夫に入れ替わってしまい、しかしそれをきっかけに他者とその人生を知ることで成長していく青春物語。

身体が入れ替わってしまうきっかけが寺の階段からの転落であり、尾道の高低差のある街のよさを巧みに利用している。

本作は一夫と一美の二人が主人公ではあるが、一夫の成長ぶりが凄い。一夫は最初、悪ガキでしかなく、一美の勉強がとてもできるような大人ぶりに全く対抗できない。しかし身体が入れ替わることで、彼はこのおかしさな事態にも毅然と対応するー一美が引っ込み思案になるのとは反対だー。そして一夫は女性の身体性を茶化す対象ではなく理解することに努める。これにより一夫は大人へと成長し、一夫と一美は対等な人間になり、恋愛の成就へと発展するのである。だから彼らが島への逃避旅行で宿を共にしてもセックスには至らない。それはまだ彼らの身体が子どもだからでもあるが、精神は大人になったからでもある。

大人になった彼らは独り立ちするから別れる。別れに帰結するのが尾道三部作の特徴ではあるが、その別れが悲しみではなく晴れ晴れしさに感じれるのは、彼らが独りでも大丈夫だと確信できるからだろう。一夫と一美に幸あれ。そして再会してくれ。きっとできる。

追記
カフェで娘の母が盛大に噛むがカットしないのなんか面白い。

ジョン・フォード『駅馬車』のポスターが一夫の家の壁に貼ってるのは、大林監督のジョン・フォードへの敬愛ぶりが窺える。

尾道の実景はやはり素晴らしい。船。瀬戸内海。階段。オレンジの列車の車体。また尾道いきたい。福山もいきたい。でもあのダブルデート、きた男は可哀想だし、みんな可哀想。あんなデートはしたくない。

DVDパッケージ表紙の小林聡美さん不細工過ぎませんか…。本編はめちゃくちゃ可愛いから、Blu-ray化する際は替えてほしい。あれで観賞者1億人ぐらい減ってる。