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マッドマックス/サンダードームのElasticReflexのレビュー・感想・評価

3.3
文明の崩壊した近未来のオーストラリア、バータータウンを主な舞台に、帰るべき故郷を夢見る人間達を描いた脱出冒険活劇。シリーズ三作目。

『フュリオサ』予習で購入した『マッドマックス・アンソロジーBOX』Bru-Ray Diskにて、数十年ぶりの鑑賞。

初見時に非常にガッカリしたので、『怒りのデスロード』公開時にも見直さなかった本作ですが、改めて観直すと悪くないどころか、とっても良かったです。

時代設定としては文明崩壊から20~30年後程度なのだと思いますが、ジョージ・ミラー監督のマッドマックスイマジネーションを押し広げた結果、もはや近未来感は皆無です。

独自の発展を遂げた文明を描写するために、本作ではセット撮影が多用されています。その美術や衣装は素晴らしい完成度ですが、明らかに映画のリアリティラインが変わっています。特に音楽に顕著なのですが、対象年齢がここまで下がってしまったのは、作品に対する愛情が故に、子どもたちに見せたくて仕方なくなってしまったのでしょうね。それは自分が大人になった今では正しい選択だと感じます。

しかし、前作までの殺伐としながらも凛とした強さを持つハードボイルド的なマッドマックス世界に愛情がある人ほど、この大胆な方向転換に戸惑いを覚えるのは致し方なくも思います。まったく違う事をやろうとしていると評価もできますが、今ならナンバリングではなく、スピンオフとして発表されていた事でしょう。

相変わらず物語は非常にシンプルなのですが、本作にはお話が二つあるため、若干の消化不良感が否めず、クライマックスでのカタルシスは薄い仕上がりではあります。しかし崩壊したシドニーの描写は凄かったですね。ミニチュア特撮だと思いますが、『猿の惑星』的といいましょうか、マッドマックスが現実にリーチしてくる感覚は新鮮でした。

兎にも角にも『怒りのデスロード』へと直結していく『マッドマックス世界』の完成のためには、どうしても本作のようなおとぎ話が避けて通れなかったのだろうと思うと熱いものが込み上げます。

製作総指揮:ジョージ・ルーカスと言われても不思議ではないシリーズ通して最も異色の一作ですが、この世界観の先も見てみたいものです。

■監督:ジョージ・ミラー、ジョージ・オギルヴィー
・脚本:ジョージ・ミラー、テリー・ヘイズ
・撮影:ディーン・セムラー
・音楽:モーリス・ジャール
・原題:『Mad Max Beyond Thunderdome』
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