不貞を働いた妻を殺害して資産を手に入れようと計画する主人公。ほぼ他人の同級生を半ば強引に仲間に引き入れ、いざ決行の日を迎えるが…。
妻の不倫相手である推理作家が「現実では完全犯罪なんてあり得ない」とご丁寧に前振りをしてくれるのだが、まさにその言葉通り完璧に思えた計画はあれよあれよと狂っていく。先の読めないこの冒頭がとにかく面白い。事件が起きて以降はやや失速した感も否めないが、終盤の推理パートがこれまた面白い。
お手本のようなサスペンスフルな展開、人間の滑稽さから生まれる笑い。サスペンスの巨匠たるヒッチコックの緊張と緩和を用いた妙技を随所で堪能出来る傑作だった。