Yoshishun

C・C・ライダーのYoshishunのレビュー・感想・評価

C・C・ライダー(1970年製作の映画)
4.0
"『イージー・ライダー』の模倣かと思いきや……"

アメリカン・ニューシネマの代表作『イージー・ライダー』のパチもんにしか見えない暴走族映画。これは邦題のせいでもあるが、実際は180°異なる作風のちょいワルライダー達のコメディ映画だった。

冒頭、ホンダバイクに乗って来た若造がスーパーに入る。普通に買い物するのかと思えば、商品の封を開け即席サンドイッチを作り始めるのだ。万引きGメンがいないとはいえ、あまりに堂々と盗みを働く男。結局はレジ前にあるガムだけ購入して去っていくのだった。

この冒頭だけで主人公であるCCのキャラクターが盗みの天才であることがわかる。そして、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でも使用された"ジェニー・テイク・ア・ライド"という楽曲に合わせ、軽快なOPで幕を開ける。掴みとしてはほぼ百点満点だ。

物語全体を観ると、案外雑というか変な場面が多い。ザ・ヘッドと呼ばれるバイク集団の一員CCは、何故モトクロスにも出場できるほどのバイクテクニックを持ち合わせているのか。かつてバイクショップで働いていたから、というだけでは不十分で劇中テクニックを披露する場面はない。また、そもそもザ・ヘッドに加入した経緯も意味不明であったり、そもそも盗みの才能もある背景も全くわからない。クライマックスでは、ザ・ヘッドのリーダーがCCのレースの誘いに乗るが、単に現金だけ要求していればいいのでは?と思わざるをえない。

しかし、本作の製作背景が60年代、つまり丁度ワンハリと同じ時代てあることから、自由主義な当時のアメリカの若者を反映させていると思うと納得がいく。平気で犯罪級の行動はするし、自由のためなら無断でグループは抜けるし、恋人の家に転がり込む。それが映画として許容される時代だったからこそ、本作における犯罪描写が妙に滑稽かつコミカルに映ってくる。

俗にいうB級映画という括りではあるかもしれないが、『イージー・ライダー』とは真逆の結末含め、観賞後の爽快さが堪らない。自由の国アメリカの自由奔放な時代に産み落とされた娯楽作として意外にも楽しめた。
Yoshishun

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