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九尾の狐と飛丸(殺生石)のmitakosamaのレビュー・感想・評価

九尾の狐と飛丸(殺生石)(1968年製作の映画)
4.4
某イベントで特別上映会が行われて参加してきました。
「日本動画」なる制作会社でつくられた55年前のアニメ。この機会を逃したら一生鑑賞できないかもしれなかった。

後に政治家になったプロデューサーの中島源太郎は、今作の為に日本動画制作会社を設立。

作画監督は杉山卓。動画動画から虫プロを経て、中島に誘われて今作へ。後に火の鳥愛のコスモゾーンを監督した人。

そして今作の監督・八木晋一だが、永らくその正体が不明だったのだが、今回の上映会で杉山卓のペンネームだと判明した!!!
20代のアニメ制作現場にベテランの実写の演出家が口を出す事が多く、余計な肩書きを増やさない為に架空の名前を当てがったのだそうな。

因みに今回見たのは60分の短縮版。冒頭の実写パートなどがカットされたそうだが、これもロケの実写班に気を遣って挿入されたシーンだそうな。
当時のアニメ業界が実写畑から如何に低く見られていたかがわかる。

さて今作を見た感想だが、コレが中々大人向きかつ、エンタメにも富んでおり見応えあった。
内容はもちろん栃木の民話・玉藻の前に関する話。那須の里に住む玉藻と飛丸。ある日、都から左大臣の忠長が狩りにやってくる。玉藻は普通に暮らしていたが実は悪魔の使い・九尾の狐だとわかる。
玉藻は京に身を置き左大臣を垂らしこみ、兄の関白・頼道を失脚させようとする。
唯一見破ったのは陰陽師の安倍泰成。

玉藻は妖力で飢饉を起こし民を苦しめる。玉藻は雨乞い対決をし、安倍も失脚させる。

飛丸も京に上がり玉藻を取り戻そうとする。玉藻は恋しい飛丸にだけは非情になれない。
玉藻のツンとデレがたまらない。

玉藻は魔王の命令で、関白になった忠長をけしかけ、都の仏像を潰させて巨大玉藻のの銅像を作らせる。
安倍や飛丸の抵抗も及ばず、なんと最終的に東大寺が燃え大仏の首が落ちる(笑)この世界の世界線は奈良の大仏壊れてるのかい(笑)

本性を表した玉藻はなんとなんと巨大玉藻像と一体化!!!巨大玉藻が襲いかかる!
これは予想外な展開だったわ!
何よりこの時代に映像映えするクライマックスとして、こんな大胆なアレンジをした事が驚きだよ。

玉藻の凶悪さも、飛丸への恋心に負ける。玉藻がとてもピュアなのだ。
玉藻は九尾の狐となり那須な地に戻り、魔王により殺生石に変えられる。雪の那須っ殺生石を前に佇む飛丸というビターな終わり。
古典をモチーフにしながらも大胆なアレンジをも取り入れて、さらに物語な繊細さも映える。

絵のテイストもリアルだが、タツノコの様なバタ臭さは無く、寧ろ今も通用する洗練されたタッチだ。
因みにキャラデザも杉山卓だが、これも紆余曲折あったそう。最初は森康二に依頼したがプロデューサー中島は子供っぽいと却下。その後さいとうたかおに依頼するも、同時に絵を描いた杉山が採用されたと言う経緯だそうな。
確かに東映動画のフルアニメのテイストと虫プロの漫画テイストが融合した現代的なタッチだ。

因みに今イベントでは、虫プロTVシリーズ・アニマル1の最終回、
マツタやホンダなどのCMなど、杉村卓が担当したアニメも同時に上映された。
中々見ることができない作品が見れて、とても勉強になった。
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