「おはよう北京」

本作は中国残留邦人女性の逞しい自立の生涯を描いた映画で、国内でソフト化されず、漸くやっとの思いでVHSを見つけて購入して初鑑賞したがやはり良かった。「雲南物語」が有名な監督で、一九九〇年に張暖忻(チャン・ヌアンシン)が監督を務め、北京市のバス車掌を主人公に、運転手との純愛が将来設計の立たぬ間に曖昧になっていく過程を都市の若者の偽りない実像を丹念に鮮やかに写した中国映画で、「青春祭」も是非観たいと思った。この作品では、欲望とエゴに走る一人の女と彼女を取り巻く三人の青年の人生観を通し、現代中国の社会点描を大胆且つ繊細なドキュメンタリータッチで描いている。欲望への希求、現実とのギャップ。一人の女と三人の若者に重くのしかかる現代中国の世相を描写した女流監督の名作で、九十一年(自分が生まれた年)第四回東京国際映画祭アジア秀作映画週間出品として正式に出品されているようだ。この映画もVHSに残しておくには惜しい映画である。てか、松竹ホームビデオは良い作品ほとんど円盤化されてないから本当に残念である。

さて、物語はアイホンは、国営交通局、北京のルート99を走るバスの車掌。寝たきりの祖父と二人暮らしで、同僚の王朗が恋人である。ある朝、同年代の永強が運転手として採用された。日曜日。アイホンは、デパートで偶然永強に会い、食事の後高価なのスカートを買ってもらう。それ以来二人は急速に親しくなり、王朗はショックから無断欠勤する。高級志向に刺激され、リッチな生活に憧れるアイホン。一方何事にも慎重な永強。考え方の相違から、二人の心は徐々に冷えていく。そんなある日、スーパーでシンガポールの留学生、克克に出会う。ハンサムで優しい彼の誘いにアイホンは、日増しに魅かれていく。やがて旅先で一夜を共にして妊娠した彼女は、彼が偽の留学生と知って路頭に迷うのだった…と簡単に説明するとこんな感じで、監督のチャン・ヌアンシンは、八十一年に映画デビューしており、八十五年に「青春祭」を発表し、国内外で一躍脚光を浴びた女性監督である。