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砂の器のkurのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
3.8
映画として人気になるのわかる、でも今の人これを見てハンセン病てわかる人どれだけいるんだろう。
ちょうど近代以前以後の変化を調べていたので昭和にどう表現されてるか見れてよかったが、今現在のハンセン病新規患者は日本ではほぼおらず治療法があるなかで各地の療養所にはまだ元患者の人が多く暮らしていて現在進行形で亡くなっていくのだけどそれはハンセン病が治っても社会復帰ができないからで、私達の多くはその差別を許容して暮らしている。
物語の中で被差別者が悲劇的弱者として描かれる典型的手法にはほとほとうんざりなので昭和だからといって「昔の映画だし」で済ませようとは思いませんな。特に日本のハンセン病への対応は先進国中最悪のものだし。それを知りませんでしたで通るわけ無いというか、現代からすれば昭和は「昔」なのでそうした当時の関係が忘れ去られ作品のドラマ性のみが語られるのはどうなの、といった気持ちです。
この映画は決してハンセン病が主体なのでなく親と子の繋がりがメインなのだけど子供の方に義親を殺す必然性がそこまで感じられずドラマを生み出す物語の仕掛けを強く感じたのでやはり違和感があるのです。
そしてこの親子の旅はいわばお遍路とでも言うべきもので近世からの風習に近いものだと思うけど、近世のときも似たようなものなんじゃないかと見てて思った。各地を巡って自分たちを受け入れてくれる場所を探す旅としてのお遍路。しかしハンセン病は神経病で盲人も多く、顔や手も崩れたりする。そうした人を前近代の人々が無条件に受け入れるだろうか?そうしたことを反射的に考えてしまった。(推測でしかないです)

だが面白く感じたのは作為性というところ。戦後の混乱で出自を操作できるとか、証拠隠滅が今と比べれば簡単だったり、そうした主体的な作為が自覚的に行われているということの性質が今と比べてストレートな印象がある。
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