ゆう

砂の器のゆうのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
4.2
面白い、そしてかなりドラマチックな日本映画。

ある日、国鉄に轢かれた死体が発見されるも、犯人はおろかその身元すら判明しない。手がかりは東北弁の亀田、その一言のみ。彼の素性、犯人が浮き彫りになっていく時、その裏側の壮絶な人生が露になっていく。というお話。

かなり古い日本の映画で、この70年代の映画はあまり見た事なかったが、良かった。途中までの展開は土曜ワイド劇場のようなドラマ仕立てだが、後半のガラッと変わる展開にこれが映画なんだなぁと思わせてくれる。

和田英良の父を演じる加藤嘉の演技が凄まじかった。息子のことを知らないとしらを切るその動作が全身を震わせていて、印象に残ってる。そして、担架に運ばれる憐れささえもたらすその格好を見てしまうとその当時ハンセン病に対するイメージが確立されてしまうのだろうなーと。
ハンセン病に対する差別がこの映画の中で登場するが、この話は今の時代でも普遍的な差別の象徴として見ることが出来る。

殺された人が悪人ではない真っ当な善人だったというのもポイント。彼がなぜ殺されることになったのか、それはこの映画のテーマでもある宿命に、横槍を入れる野暮な行為だったと、そう言うことかもしれない。善意からもたらす行為が、悲劇を生むことになってしまうこともあるということかもね。

古いからと言って稚拙なわけでは決してなく、特に後半の展開や描写には鬼気迫るものがあるのでぜひ見て欲しい1作。
ゆう

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