やかましい小娘

砂の器のやかましい小娘のレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
4.8
私のオールタイム・ベスト、邦画編に間違いなく入る作品。映画館で見れて本当に良かった、シネ・ヌーヴォに感謝。

どこをとっても素晴らしい作品だった。もう、あの「松竹映画」の赤富士から最高。撮影、照明、ロケハン、非の打ち所がない完璧さ。
どこから書いていいかすら分からないけれど、ひとまず順をおって書いていく事とする。
まず衝撃を受けたのは、秋田のシーン。丹羽哲郎と森田健作が田の中を歩いてゆく。地元の人間とすれ違う、スーツを肩にかけて、そこからグッとカメラが引いて、東北をつらぬく壮大な山々と一面の田園が映る。
口を開けて画面に見入っていたと思う。草いきれがこちらにまで匂ってきそうな、そんな錯覚を覚えた。今は真冬の1月だと言うのに。
こうしてこの映画は幕を開ける訳だが、どのシーンにも無駄がない。駅で慌ただしく新聞を買うカット、トリスバーで聞き取りしながら再現するシーン、今はもう見ない地図専門店で地図を買い占めて出てくるシーン、どれもこれもなんかもう、挙げだしたらキリがない。
脇を固める俳優だけでなく、科研の名前もないような研究員やトリスバーの店員と女たち一人一人の演技もいいんだよな……(ビーカーを灰皿代わりにしてる研究員めっちゃ良かった、私もあれやりたい)
特に、山田洋次ですか!伊勢の小さい映画館の支配人に渥美清をあてたのは!めちゃくちゃ似合ってます、ハマってます、伊勢のひかり座の支配人をやる渥美清を見るためだけにこの映画を見てもいいと思います。

丹羽哲郎と加藤剛、この2人に関してはもうなんか何か言うのも野暮な気がしてきた……この映画見たらわかる、ほんとに、はぁ、加藤剛のこと、好きだなぁと思う。いい演者だな、会ってみたかったな、ほんとにすごい人なんだなって、しみじみおもった。午前中にこの映画を見終わって、夜遅くに帰宅しに布団に入ってからも彼のことを思った。
芥川也寸志と菅野光亮の音楽も最高だった。いつかナマで聞ける機会が来ないものか。
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