りり

砂の器のりりのネタバレレビュー・内容・結末

砂の器(1974年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

国鉄の操車場内で殺人事件が発生。しかし被害者の身許が不明で捜査が難航する。そんな矢先、聞き込み調査から得られたキーワード、"東北弁の「カメダ」"
そのたった1つの言葉から徐々に謎が解け始め、事件は思わぬ展開を迎えるサスペンスストーリー。

自分がこれまで観てきた映画の中でも1番古い作品だった為何となく躊躇していたけれど、泣ける映画として評価が高かったので挑戦。

デジタルリマスター版を観ていたのだがそれでも映像は古めで、開始数秒で視聴を辞めようかと何度か頭を過った。しかし謎が解けていく様子はテンポが良く、気がつけば映像の古さなんて気にならないくらい集中して観ることができ完走。観終わった後でも特に不自然に感じる点もなく、サスペンス映画として期待値以上に楽しめた。

ただ秀夫と千代吉を救ってくれた善人を殺すには犯行の動機がイマイチ弱いと終盤まで気に掛かっており、結局最後までピンと来ずに終わってしまった。

というのも今作はハンセン氏病が隠れたテーマになっているのだが、自分はこの作品を観るまでハンセン氏病というものについてよく知らずにいた為であった。

この病について調べ、初めて、かつて日本で実際に起こったハンセン氏病患者やその家族への差別・迫害の社会問題について知ることになった。
この当時の残酷な問題を知っているのと知らないのとでは、この映画の捉え方がまるで違うと感じる。

千代吉の慟哭する様子や「そんな人知らねぇ!」の言葉の重さ、犯人の自身の名誉を守る為の行動、「彼はもう音楽の中でしか父親に会えない。」そのセリフがきっと心に沁みて、そこでようやく本当の意味で初めてこの映画を観たことになるのだとおもう。
2回目観た時には泣いてしまうかもしれない。
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