■ 概要
スティーブン・スピルバーグ監督、ジョージ・ルーカス原案&製作総指揮、ハリソン・フォード主演によるアドベンチャー映画の金字塔「インディ・ジョーンズ」のシリーズ第2作。
■ あらすじ
『1935年。
上海のナイトクラブでマフィアとトラブルになったインディは、クラブの歌姫ウィリーと現地の少年ショーティを連れて逃亡するが、飛行機が墜落しインドの山奥に不時着してしまう。
寂れた村に辿り着いた彼らは、この村の子どもたちが邪教集団にさらわれ、村の秘宝「サンカラストーン」も奪われたことを知る。』
■ 寸評
理屈も何もない娯楽超大作。
個人的には、「インディ・ジョーンズシリーズ」の中で最も好きな作品である。
冒頭のシークエンスから、最後の大円団まで、息を抜く箇所がないノンストップ・アクションが展開されている。
前作の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』のような重厚感や推進力はないが、喜劇と驚異とが渾然一体となった素晴らしいエンターテイメントを演出している。
鑑賞中に、まるで夢のような世界に心を誘導してくれるような作品である。
■ シナリオ
本作は「インディ・ジョーンズシリーズ」の中で2作目に当たる作品だが、前作の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』の1年前を描いている。
前作では、底に流れるような真剣さやパルプ小説らしさが見られたが、本作ではそれらが失われている。
それとは、真逆のスタンスを取り、不真面目で強引的になっているのだ。
だからと言って、本作が失敗作という訳ではない。
むしろ、個人的には不真面目で強引的なものが本作の最大の美点であり、「インディ・ジョーンズシリーズ」の魅力を最大限に引き出しているように思える。
この手の作品のストーリーテリングは、視聴者の心に訴える必要性はない。
観客の興味を引いて楽しませるだけでいいのだ。
だから重厚で複雑なストーリーよりも、インディとガキと尻軽バカ女が喧嘩しつつも、お互いに協力してピンチを乗り越える・・・といった中身のないストーリーの方が、より視聴者の興味を引きやすく楽しませることが出来る。
ただ個人的には、1作目の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』と3作目の『最後の聖戦』で登場したナチスが敵として出て欲しかったかな・・・。
やはり敵役はナチスでないと。
ナチスに比べると邪教集団では、ストーリー的に盛り上がり方が全然違うぞ!!
あと、本作では物語の舞台を、冒頭では中国大陸、そしてメインがインドとなっているが、あのまま中国大陸をメインにした話も観てみたかったかな・・・。
邪教集団よりも全然魅力的だったし・・・。
そういえば、冒頭で飛行機を脱出した2人組って、あれからどうなったのかな??
多分、着地地点はインドの雪山だと思うのだが、果たして中国まで生きて帰って来れたのだろうか・・・。
■ キャラクター
◎インディ・ジョーンズ【演:ハリソン・フォード】
本作のインディ・ジョーンズはシリーズの中で最も自信に満ち溢れており、肉体的にも最もたくましいように思える。
ただ、シリーズの中で最も探求心がないようにも思える。
だからこそ、本作がシリーズで最もエンターテイメント度と完成度が高く、年齢関係なく楽しめるジェットコースタームービーとなっている訳だが・・・。
個人的には、インディ・ジョーンズが苦手としている蛇との絡みが好きなので、もう少し蛇を出して欲しかったかな・・・。
◎ウィリー・スコット【演:ケート・キャプショー】
インディ・ジョーンズは非常に魅力的なキャラクターだが、個人的に本作で最も魅力的なキャラクターは、ヒロインのウィリーだと思う。
本作は、喜劇と驚異とが渾然一体となったシークエンスとなっており、大いに楽しませてくれた。
この一番の功労者がこのウィリーである。
このウィリーというヒロイン・・・前作『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』でカレン・アレンが演じたヒロインとはまるで正反対だ。
彼女は金目当てで男を近づき全財産を巻き上げる『ルパン三世』の峰不二子のようなタイプの女性である。
ただ峰不二子と違うのは、美女ではあるが絶世の美女という訳ではなく、運動神経も悪く、かなりのドジで頭も悪い。
基本的に悲鳴ばかりを上げてばかりの足手まといの道化である。
これだけだと、観ていてイライラしそうなキャラクターに思うかもしれないが、これをいい感じに料理して魅力的なキャラクターに仕上げている。
インディ・ジョーンズとの喧嘩は観ていて面白いし、彼女を馬鹿にしたギャグも、古典的な笑劇の味を感じることが出来る。
個人的には、インディ・ジョーンズをベッドの上で待っているシーンが一番笑えたかな。
また、単に悲鳴を上げるだけの、アバズレ女として描くのだけなく、けたたましい健全さや困難に立ち向かう勇気を持ち合わせている。
本作で最も魅力的なキャラクターだと思うが、何の過程もなく、いきなりインディ・ジョーンズとくっつくのに関しては違和感しかない。
いくらアバズレとはいえ、つい5分くらい前まで喧嘩しあっていた2人が急にキスするのはなぁ~~・・・。
このウィリーという名前は、スピルバーグの愛犬から取った名前らしい。
◎ショート・ラウンド【演:キー・ホイ・クアン】
本作のインディ・ジョーンズの相棒。
小柄な少年ではあるが、「勇敢で機転が利き、尚且つ頭がいい」といった魅力的なキャラクターとなっている。
本作の真のヒーローは彼といっても過言ではない。
個人的には、ショートと国王に何かしらの接点を付けた方が、ラストのガチバトルがより盛り上がったと思うのだが・・・。
因みに、このショートの名前は、脚本家グロリア・カッツの愛犬から取った名前らしい。
■ 演出
先程も書いた通り、本作は、冒頭の上海のシークエンスから、最後の大円団まで、息を抜く箇所がないノンストップ・アクションが展開されている。
全体的に面白く画面に引き付けられっぱなしだが、特に素晴らしいのは、冒頭の上海とラストのトロッコのシーンである。
◎ 上海
間違いなくこのオープニングは、シリーズ最高の出来栄えである。
インディ・ジョーンズとウィリー、そしてギャングが、3つ巴の乱痴気騒ぎとなるのだが、これが実に面白い。
ダイヤ・毒薬・解毒剤・回転盆・車・人力車の特性を上手く活かしており、アイデア山盛りの陽気なドタパタ喜劇となっている。
実にエキサイティングだ。
そして、この冒頭のアクションはキャラクター紹介も兼ねているのだが、これが実に自然で視聴者に直感的に理解できるように演出されている。
ここら辺は見事というしかない・・・。
冒頭からインドの奥地へ移るまで約20分近くノンストップ・アクションが続くが、ここまで視聴者の興奮を余すところなく引き出せる演出腕力は相当なものである。
◎ トロッコ
本作の最大の見せ場と言えば、インディ・ジョーンズたちが坑掘削用のトロッコでの脱出するシーンだ。
巧みなカメラワークやカメラアングル、素晴らしいショットのつなぎ。
そしてバスターキートンを彷彿とさせる素晴らしいアクションが、視聴者の興奮を最大限に引き出させてくれる。
まるで、インディ・ジョーンズたちと一緒にトロッコに乗っているような感覚に陥ってしまうようだ。
ラストの水の下りのオチも最高に笑えるし、まさに最高の見せ場である。
■ 総評
個人的には、シリーズで最もインディー・ジョーンズらしく完成度が高い作品だと思う。
ただ、一点だけ不満があるとすれば、音楽だろうか・・・。
本作の音楽はジョン・ウィリアムスが担当しているが、映画のトーンに比べ少々重すぎるように思える。
もう少し軽快な音楽の方が、本作のトーンに合っていると思う。
まあ、そこまでは気にならないんだけどね・・・。