かずき

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのかずきのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

2017.1.29 録画にて鑑賞。

9.11テロにより、父を失った少年の話。
愛する父の死は、繊細過ぎる少年の心に消えない傷と、いわれなき重い後悔とを残す。当然彼の家族もまた、夫を亡くし、子を亡くした被害者であるが、悲しみという共通項で結ばれているはずの彼らは、お互いの悲しみの質の違いを理解しきれず、すれ違ってしまう。
オスカーが父から自分へのメッセージだと思っていた鍵は結局、違う父から違う息子にあてられたものだった。オスカーは失望に苛まれるが、探検の旅を終えた彼に残ったのは、さまざまな人々との思い出と『ブランコを漕ぐ』勇気、そして母の愛の発見であった。
オスカーの母もまた、自身の悲しみと息子の悲しみの折り合いを見つけられず苦しんでいたが、彼女なりのアプローチで息子への愛情を示していたのである。
そう考えると、トーマスが自身の死をきっかけに遺した探検の旅は、直接関係のないブラック氏の救済のみならず、遺された家族を一つにするための最後の贈り物だったと言える。
映画として完璧な構図に、感動すら覚える作品であった。
かずき

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