みおこし

永遠の人のみおこしのレビュー・感想・評価

永遠の人(1961年製作の映画)
3.4
九州の阿蘇に住む小作人の娘・さだ子には、出征中の恋人の隆がいる。しかし、さだ子に想いを寄せている帰還兵・平兵衛に犯されるという事件が発生。失意のあまりさだ子は自殺未遂を図るが一命をとりとめ、更にはお腹に平兵衛の子供を宿していることが判明する…。

名匠・木下惠介監督による、29年にも渡る男女の愛憎を描いた年代記。ショッキングなあらすじからも分かるように、ひとりの男性に人生を狂わされてしまった女性の壮絶な復讐劇(タイトルの"永遠の人”って色々捉えられるけれど、”永遠に許せない人”ってことなのかなと自分は解釈)で、作品全体の重苦しい雰囲気が凄まじい…!『二十四の瞳』や『カルメン故郷に帰る』など、同じ木下監督&高峰秀子さん主演の作品とは決定的に雰囲気が違う1本でした。高峰さん、仲代達矢さん、そして佐田啓二さんの熱演で魅せる壮絶な物語、阿蘇の雄大な景色をモノクロ映像ながら芸術的に捉えたカメラワーク、どれをとっても素晴らしい秀作で、米・アカデミー賞の外国語作品賞にノミネートされたというのも納得。
また、辛い宿命を背負ったさだ子の息子役を田村正和さんが演じているのにもびっくり!本作でデビューということで、当時18歳の初々しい印象ながら、もうその色気というか雰囲気は完成されていて流石すぎる…!
また、九州を舞台にしながらも、フラメンコのリズムが終始使われているのもすごくユニーク。ただ、あまりに何度も使われるので強烈過ぎて個人的にはあまり受け付けずでした…(笑)。

映画のレビューとしてはここまでにして、最後に田村さんについて少し…。
訃報を聞いたときから何だか心にぽっかり穴が開いたような気持ちで、改めてどれだけ田村さんが自分含めた日本国民にとって大きな存在だったかを痛感しています。物心ついた時から当たり前のようにテレビやCMでお見かけしてきて、特に『古畑任三郎』に関しては今までもこれからもこれを超えるドラマには出会えないと言い切れるくらい、私に色んな感動と刺激をくれた思い出の作品です。
最近彼の出演作や演技について語るインタビュー映像を観返しているのですが、そのたびに作品や演技に懸ける情熱や思いに圧倒されて、ここまで私たちに最高のものを届け続けてくださったことにただただ感謝の思いが募るばかり。八嶋智人さんも同じ表現をされていましたが、まさに"永遠の人"。心からご冥福をお祈りいたします。
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