kuronori

山のkuronoriのレビュー・感想・評価

(1955年製作の映画)
4.0
若い頃テレビで観て、隠れた名作だと思った作品です。果たして今観たらどうなのか?
演歌の曲名みたいなタイトルですが、テレビ放送時のタイトルは「壮絶!旅客機墜落現場!山」みたいな感じの題名だったと記憶しています(笑)。

さて、改めて観てみましょう。
スイスアルプスのアイガー山頂付近に旅客機が墜落するシーンから始まります。麓の村では緊急の救助計画会議が開かれます。
かっての有名山岳ガイド、ザカリーは既に引退して羊飼いをしています。救助隊のリーダーとして請われますが、過去の事故から自分は「山に嫌われている」と感じている彼は固辞します。
しかしザカリー抜きで出発した救助隊は、早々に犠牲者を出して頓挫してしまい、救出はすぐに来る本格的な冬をやり過ごし春になるのを待つことになります。
そして、救助隊の派遣が延期になったのを知ったザカリーの弟は、ある計画を思いつくのでした…。

古い映画なので、スロースターターです。最初ちょっともたつきますが、山に登り始めてからは一気にみられます。
ストーリーはストレートでダイレクトです。単純で先が読めるといえば、そうなんですが、こういった山岳ものの基本骨格的な作品だと思います。
昔見た時はもっと登山シーンが長かったようなイメージでしたが、思ったよりアッサリしています。作品全体も109分とコンパクトです。
いや、今の人達が観たらどうなのでしょう?「え?もう終わり!?」とか思うのかな???

スペンサー・トレイシーとロバート・ワグナーは歳の離れた兄弟という設定ですが、どうみても兄弟にみえません(笑)。作中、おれがこの手で取り上げた弟云々とあります。うーん。その辺深くは描かれませんが、親子設定じゃ駄目なのかな?
(後日追記:町山智浩氏によると、この二人は、旧約聖書のカインとアベルや日本の山彦海彦などの、世界のいろんなところにある兄弟の神話的なものがモデルになっているのだそうです。なるほどそれなら兄弟でないと意味なくなるわけか…)
しかし今観ると、弟を演じた二枚目俳優ロバート・ワグナー、イケメンな容貌も逆に武器にして憎まれ役を演じきっています。
兄と弟の性格を対照的に設定し、対比構造にすることによって、互いのキャラを強調してます。

私は登山に関する知識は無いですが、わかってる方が観れば、もはや廃れてしまった昔の登山技術を見ることが出来て、逆に面白いんだとか。
また舞台になったアイガーに詳しい人から見ると、ルート的にそこからそこへはつながらないだろうとか、それは別の場所だろうとか色々と突っ込みどころがあるようですが、私にゃわかりません(笑)。

真面目でまっとうでケレン味の無いストレートな山岳ものです。
昔の記憶より単純で直接的な作品でしたけど、私はやっぱり好きですね。
(後日追記:「単純」に感じてしまったのは、私の鑑識眼の無さゆえのようです。象徴的で重厚な人間ドラマがそこにはあるようです。もっかい観て反省しよう。)
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