似太郎

日本侠花伝の似太郎のレビュー・感想・評価

日本侠花伝(1973年製作の映画)
4.7
【♂と♀】

70年代に入り、松竹や東宝に移籍してから加藤泰作品はどんどん長尺化が進む。『人生劇場』然り『花と龍』然り『宮本武蔵』然り。

本作の主演を努めるのは真木洋子と渡哲也。まさしく宿命のカップルであり誰にも引き裂かれまいとする理想的な【男と女】像…。あくまで加藤監督の脳内では。

どの作品を観ても加藤泰は、男女同士の【約束】とか【信念】とか【一貫した殉愛】みたいな任侠映画特有のドロドロした側面ばかり描いており、根が真面目な監督なのだろう。そんなドロドロ或いはゲチョゲチョした、燃えたぎるようなメロドラマ色の強い本作はまさしく加藤フリークのためにある濃ゆい作品。

前衛的(画面がブツ切れ)なカット割や変てこカメラアングル等、どこを切っても加藤節の炸裂した、どちらかと言えば非・やくざ映画路線でありジャンル的にはメロドラマや女性映画に分類されるべき異色作。

特に後半の薄暗い神戸港での主演二人による儚くも濃厚なラブ・シーンを観るだけでも価値のある作品だと思う。波瀾万丈の女の一代記、というコンセプトは加藤監督が60年代に撮った『骨までしゃぶる』にも通底する。どこまでもくどい、しつこい、ねちっこい…。そんな雰囲気に「酔える」人であれば是非ともオススメしたい一作。
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