タケミ

地獄の黙示録・特別完全版のタケミのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録・特別完全版(2001年製作の映画)
5.0
混沌とした現場を映しても、映画は狂気を描くことはできない。
狂気を描くなら、それを演出しなければならないから。ストーリーのなかでショットを重ね、冷静な計算を巡らせて、狂気のように見える架空を作り上げる。

コッポラのパートナーによる著名なドキュメンタリーによって撮影時の混沌が人口に膾炙した今、あらためて本作を評価するときに編集のウォルター・マーチの存在を外すことはできないだろう。
マーチは編集によって詩を宿らせる特別な手を持っている。長大なフッテージのなかで、彼はなぜか正しいカットを見つけることができる。
いったいなぜ。

曰く、
その瞬間の感情に忠実であること。
ストーリーを推し進めていること。
さらに曰く、
スクリーンの二次元性を尊重していること。
三次元空間の連続性を尊重していること。

特別完全版?
完全とはなんだろうか。しかしマーチにより多くのフッテージと吟味の時間が与えられるなら、それは確実に一歩近づくことになる。
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