葛西ロボ

地獄の黙示録・特別完全版の葛西ロボのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録・特別完全版(2001年製作の映画)
3.6
 奇妙な映画だった。ひとつひとつのシーンは悪くないのに、全体としてはガッタガタ。傑作というよりは壮大な失敗作という感じ。
 ジャングルの奥地で原住民を統率する元アメリカ兵カーツ大佐を暗殺しに行くというのが大筋。途中で何度も忘れそうになるけど、一応主人公がことあるごとに大佐のことを推察して、修羅場を超えるごとに(なんとなく彼の気持ちもわかる気がするな~)と理解を寄せていく。この大筋だけ追うと、わかりやすいどころか、露骨な感じさえする。
 例のワーグナー流しながらの襲撃やサーフィンのための爆撃なども、戦争に対するアンチテーゼにしては喜劇化されすぎて、映像の重厚な雰囲気とは齟齬を来している。莫大な予算を使ってはいるが、リアリティ路線なわけではなく、エンタメをしているわりには反戦映画でもある。本当によくわからない。
 でもキルゴア中佐のくだりは変に魅力があるんですよね。バカンスにでも来ているみたいに戦争して、その皮肉り方が痛快でもある。「ボードを返せ」って呼びかけるところなんて完全にギャグだ。
 フランス人入植者やプレイメイトと楽しむシーンは完全版で追加されたシーンのようで、映画の流れを断ち切ってはいるが、前者は特にベトナム戦争というものを考える上で拝聴しておくべきものとなっている。
 肝心のカーツ大佐に会ってからは、映像も暗さを増し、宗教的、精神的な側面が強調されて、また別の映画になった気がする。
 この200分を集中力切らさずに見るのは至難の業だと思う。僕は一旦寝ました。それもあってか前半と後半とでは違う映画を見たような気さえします。前半4.0、後半3.2です。