鹿shika

セント・オブ・ウーマン/夢の香りの鹿shikaのレビュー・感想・評価

5.0
ロンドンの名門校に奨学金で入学した男子学生が、感謝祭の休暇中に全盲の退役軍人の世話のバイトをすることに。しかし彼はNYへ行くチケットを買っており、彼の旅に付き添うことに。

これは良すぎる。これは良すぎる。
どうしてこれまで見てこなかったんだ。と悔しすぎて唇を噛んでしまう。
控えめに言って最高の映画じゃないか。
次からオススメの映画聞かれた時に、ロッキーとかランボーとか言わずに『セント・オブ・ウーマン』って言うことにする。

まず、マフィア役ではないアル・パチーノを初めて見た!笑
しかも今作で演じたのは全盲というハンディキャップを負う役だ。
しかし今作でも、キレまくる彼は健在なので安心。いや、彼の血管は心配。

感謝祭の前日に、同級生たちは校長先生の車にイタズラをする。
それにブチギレ、犯人探しが始まり、主人公チャーリーが巻き込まれ、「犯人が誰だか言ったら大学の推薦を考えてやる」と告げ、休暇中に考えるように言われる。
もうこの時点で、校長は犯人を知っているのだ。目撃証言者として彼を使いたいのだ。
そして甘い蜜で釣ろうとしているのだ。
友人を守るか、自分の進学を守るのか。究極の二者選択を迫られる。

休暇中は、全盲の元軍人のガンコ親父の付き添いをしなければならない。
そんな2人の旅での会話が良すぎた。
良すぎるので、全文書き出そうかなと思い立って、今書き出して3分。映画は157分。笑っちゃうぜまったく。

2人の旅が始まるのだが、フランクが度々発するセリフが、人生を語っているようで、しかしおじいちゃん映画モノあるあるの、人生の先輩として諭すような話し方ではなく、
人生なんてどうだって良いだろ。みたいな話し方が粋なのだ。
そうやって、年齢の離れた関係性ができてゆく。しかしこれは友情や親子愛のようなものではない。
この2人だけが築くことができる、この2人だけの関係なのだ。

しかしそんなフランクだが、本当は人生をどうでも良いと思っているのだ。
銃を持参しており、自殺を図ろうとする。このNYへの旅は、彼の最期の旅だったのだ。
そんな彼を止める時に、チャーリーの心に変化が生まれるのだ。
そう。フランクとの長い旅の間では、ほぼ変わらないのはむしろすごいのだがな。

ここでやっと、自分の気持ちを理解するのだ。
普段から、遠慮がちで平和主義で、自分のことは後に回す。無意識に。
そのように育つと、自分が抱いている感情なのに、自分でも分からなくなるケースがあるのだ。

こめかみに銃を突きつけているフランクを止める。
しかし、フランクはチャーリーの眉間に銃口を向けて、お前を道連れにする。というのだ。
ここで、新たに究極の二者選択を迫られるのだが、初めの二者選択よりもずっと重いものだ。
命が掛かっているからだ。
自分も、恐怖で涙を流しているのに、強気の言葉を吐きながら涙するそのシーンは
とてつもなくリアルで、アル・パチーノの迫力のある演技に負けないくらいのもので、一緒に泣きそうになった。
悲しくも、恐怖の涙でもなく、心臓が震えたときの涙だよ、、

好きなセリフ書き出した!下記!

「生きてて何になる。ジョージは口を割り、君をそれにならう。
一度妥協するとこの国にごまんといる、魂のない灰色の男の一人になる。
人間としておしまいだ。」

「何か飲ませてくれ」
「コーヒーは?
「ふっ 死ぬ勇気がなくなった。明日また考えよう。
コーヒーよりジョンダニエル氏がいいな。ストレートで。」

「私も何度か人生の岐路に立った。どっちの道が正しいか判断できた。いつも判断できた。
だがその道を行かなかった。困難な道だったからだ。
チャーリーはその岐路に直面した。そして彼は正しい道を選んだ。
真の人間を形成する、信念の道だ。
彼の旅を続けさせてやろう。彼の未来は君ら委員会の手中にある。
価値のある未来だ。保証する。潰さずに守ってやってくれ。愛情を持って
いつかそれを誇れる日が来る。」
鹿shika

鹿shika