むるそー

一人息子のむるそーのレビュー・感想・評価

一人息子(1936年製作の映画)
4.8
女手ひとつで息子を育て、本人の希望を叶えて中学校にまで行かせた母親。長い年月を経て再開した息子は、東京で何者にもなっていなかった。期待していた姿とは違う息子の姿と向き合わされる母親と、合わせる顔がないのに幸せな姿を見せなければいけない息子の葛藤を描く作品。

何者でもないことへのジレンマを描く作品はモラトリアム人間の現在の自分には必要以上に刺さりすぎちゃってだめ。それでも前を向ける結末を用意してくれる小津安二郎は本当に優しい。

あと息子役の日守新一が10年代のディカプリオっぽくて男前。他の出演作ではそんなこと思わなかったからこの時だけかも。思い悩んでいる姿が小津調のローアングルショットと相まって色気もオーラも凄かった。
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