くろいひと

一人息子のくろいひとのレビュー・感想・評価

一人息子(1936年製作の映画)
3.3

小津安二郎の初の本格的トーキー。

都会の片隅でささやかに生きる人間に焦点をあてたヒューマンドラマだが、東京へいだく夢とそこでの生活の現実とのギャップをえがいた、理屈ではかたれないある意味残酷なはなしでもある。
飯田蝶子の長ゼリフは、これぞトーキーで撮られなければならなかった切実なる名演。

「ねえ、これがトーキーってんですよ」と映画館で『未完成交響楽』を親子で観るシーンがあるが、みずからの初トーキー作のなかに同作を長々と引用する大胆さに驚かされる。
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