くろいひとさんの映画レビュー・感想・評価

くろいひと

くろいひと

映画(653)
ドラマ(0)
  • List view
  • Grid view

TENET テネット(2020年製作の映画)

3.9


タイムリープものは数多くあるが、たんなる過去や未来への跳躍にとどまらず、時間そのものの流れ方が逆行するという、まったく新しい切り口が新鮮。
そもそも映画とは「逆回し」が可能なジャンルであり、その古典
>>続きを読む

婚約者の友人(2016年製作の映画)

4.0


ルビッチ監督の古典的名作『私が殺した男』を鬼才フランソワ・オゾンがリメイクした一本。

ルビッチのオリジナルもすきのない傑作だが、そのプロットとテーマを見事に拡張して現代に生まれかわらせたその手腕は
>>続きを読む

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)

4.2


ほんとうにいい映画だけが醸しだせるアトモスフィアをまとった傑作。

あたらしく子供が生まれなくなった近未来におけるものがたりだが、それと移民問題とを絡めたところが素晴らしく、わたしたちの今生きている
>>続きを読む

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)

3.7


離婚する一組の夫婦のその子供をえがくという、プロットとしてはありきたりなものがたり。
しかし、離婚調停のなかで明るみにされる負の部分によって、夫婦のポジティブな部分を浮かびあがらせるという構成がうま
>>続きを読む

グレース・オブ・ゴッド 告発の時(2018年製作の映画)

3.6


カトリックの聖職者による児童性的虐待を、三人の被害者を主人公にしてえがく。

「ドキュメンタリータッチのフィクション」という作品はたくさんあるが、本作は「フィクションタッチのドキュメンタリー」という
>>続きを読む

ROMA/ローマ 完成までの道(2020年製作の映画)

2.7


傑作『ROMA』がどのようにしてつくられたか、監督のインタビューを中心にしたドキュメンタリー。

個人的な記憶のリアリティと、チームとしての現場でのリアリティを大事に作られたことがよくわかる。
家具
>>続きを読む

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)

4.3


はじまりからおわりまで、ある種の映画的完全さをそなえた大傑作。

あえてモノクロで撮られたその映像が、雑多なメキシコシティの街並みから森や海といった自然の風景までを、このうえなく美しくひとつの世界に
>>続きを読む

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)

3.5


黒沢清監督の代表作のひとつ。

硬直したシステムのなかで成長することをやめた日本の、いびつな現実を凝縮した寓話。
リアルから不思議なファンタジーがいつのまにか生まれる黒沢節。
しかし、「ソナタ」とい
>>続きを読む

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.2


わずか30分ほどの「ほとんど全てが」静止画とナレーションだけで構成された大傑作。

架空の第三次世界大戦下を舞台にしたSF映画だが、その正体は映画という表現ジャンルへの批評的自己言及だろう。

見る
>>続きを読む

武蔵野夫人(1951年製作の映画)

3.5


戦後の武蔵野を舞台にした大岡昇平のベストセラーを原作とした一本。

ものがたりとしてはつっこみどころ満載な凡庸なるメロドラマだが、美しい武蔵野の情景が映画に品格をあたえているのが見どころ。
中庭をは
>>続きを読む

カツベン!(2019年製作の映画)

2.6


そのコンセプトも筋立てもきわめて面白いものでありながら、脚本も演出も演技もなんともいえない雑なしあがりで閉口する。
まったく時代を無視した設定や衣装にリアリティがないのはご愛嬌、肝心の弁士の語りもそ
>>続きを読む

舞妓はレディ(2014年製作の映画)

3.4


あいかわらず題材とコンセプトは飛び抜けて面白い。

『マイ・フェア・レディ』を衰退しつつある下八軒(笑)の舞妓にアレンジするというそのアイディアは秀逸で、個性的な作品になっている。
とくに後半はなか
>>続きを読む

終の信託(2012年製作の映画)

3.9


終末医療における安楽死問題をあつかった意欲作。

フィルムで撮られた美しい映像と、けっして器用な女優ではない草刈民代がみせるかざらない演技のリアリティがなにより素晴らしい。
「その時」を正面からえが
>>続きを読む

それでもボクはやってない(2007年製作の映画)

3.9


痴漢の冤罪事件をあつかった社会派の傑作。

事件の発端から取り調べ、裁判、判決にいたるまでがきわめてていねいにえがかれ、最後まで心理的なリアリティを保ちつづけていることが印象的。
ひたすら繰り返され
>>続きを読む

Shall we ダンス?(1996年製作の映画)

3.3


あまりに有名な周防正行監督の代表作。

コメディタッチでありながら、独特なゆるいテンポと空気は健在。
キャラ頼みの前半においてはそれが生かされないまま弛緩した時間が過ぎていくが、後半になりドラマが動
>>続きを読む

シコふんじゃった。(1991年製作の映画)

3.6


廃部寸前の大学の相撲部の存続をかけて立ちあがる若者たちをえがく傑作コメディ。

前作『ファンシイダンス』よりもはるかにその独特なタッチは洗練されている。
小津安二郎よろしくバストショットの切り替えし
>>続きを読む

ファンシイダンス(1989年製作の映画)

2.8


いくつかの絶妙な「間」や息を呑む光る演出があるにもかかわらず、中途半端な印象はぬぐえない。
その後おおくの勘違いした「脱力系」コミックの安易な実写化という模倣を生みだすことに。

本木雅弘の独特のう
>>続きを読む

蜃気楼の舟(2015年製作の映画)

3.2


ホームレスを囲い込んでその生活保護費をピンハネする、いわゆる「囲い屋」をえがく。

美しい映像でつづられる告発されるべき社会の片隅の風景と、象徴的なファンタジー。
砂丘を駆け下りる田中泯の圧倒的な存
>>続きを読む

乱れ雲(1967年製作の映画)

4.0


成瀬巳喜男の遺作。

プロットそのものはいささか通俗的で陳腐なメロドラマだが、成瀬のきめこまやかな演出の素晴らしさと司葉子の圧倒的な名演のおかげで、映画を観る愉しみにあふれた一本になっている。
開け
>>続きを読む

乱れる(1964年製作の映画)

3.6


既視感のある家族構成とキャスティングのなか、本作で展開されるのは義理の姉弟のものがたり。

未亡人になった長男の嫁という宙ぶらりんな存在が、スーパーマーケットに脅かされる小売商店という作品の舞台そ
>>続きを読む

放浪記(1962年製作の映画)

3.7


林芙美子の自伝的作品を原作とした女の一代記。

先行する舞台版が存在することもあって、エピソードの羅列に陥る愚をたくみに逃れている。
そのぶん各場面はいささか大味で、演出も演技も映画的繊細さには欠け
>>続きを読む

女の座(1962年製作の映画)

3.9


おなじ成瀬監督の『娘・妻・母』と似た作品構造をもつ。

たかられる者とたかる者が家族という仮構のつながりのなかで重なりあうものがたり。
クライマックスにいたるまではセンチメンタルな要素をあえて削ぎ落
>>続きを読む

秋立ちぬ(1960年製作の映画)

3.7


成瀬巳喜男にはめずらしく子供を主人公にした佳作。

主人公の英男のものがたりというより、英男の目をとおして都会の生活の冷たさ、残酷さをえがいた寓話というべきか。
子供が演じることで、よりその批評的視
>>続きを読む

娘・妻・母(1960年製作の映画)

3.8


愛情関係や社会的な制度の犠牲になる女たちをえがいてきた成瀬巳喜男が本作で撮るのは、金の問題で微妙にバランスを変えていく、リアリティある人間関係のドラマ。
シーンのつなぎかたも(ややあからさますぎるく
>>続きを読む

女が階段を上る時(1960年製作の映画)

3.4


銀座ではたらく女たちをえがいた作品。

ものがたりとしてやや凡庸だが、店のマダムをつとめる主人公がそもそも水商売か自分に向いていないと自覚しているところが典型をはずれて面白く、それが高峰秀子のキャラ
>>続きを読む

あらくれ(1957年製作の映画)

3.7


どうしようもない男たちとそのなかで生き抜く女という、成瀬巳喜男お得意のテーマをえがく。
お島の強さは波乱万丈の境遇に耐える強さではなく、みずからあらくれる運命を選んで生きる強さだが、高峰秀子がうまく
>>続きを読む

流れる(1956年製作の映画)

4.0


芸者置屋が舞台の幸田文の小説を原作とした、成瀬巳喜男の掛け値なしの最高傑作。

この映画の魅力は、まず第一にこれ以上なくはまったキャスティング。
山田五十鈴、田中絹代、高峰秀子の三人のスターを中心に
>>続きを読む

驟雨(1956年製作の映画)

3.8


岸田国士のいつつかの戯曲を一本にまとめあげた、水木洋子の脚本がまず秀逸。

倦怠期をむかえた夫婦というなにやら既視感のある設定だが、『めし』よりも作品としてはるかに緻密で完成度が高い。
気が利いたセ
>>続きを読む

晩菊(1954年製作の映画)

3.5


金貸しのきんと、彼女から金を借りているむかしの芸者仲間たちとの群像劇。

見事な構成・演出と随所にみられるセンスあるユーモアが、いっけんなんの救いもないこのものがたりにポジティブな後味をあたえている
>>続きを読む

浮雲(1955年製作の映画)

3.5


林芙美子の傑作長編にもとづく、波乱万丈な女の生き様をえがいた作品。

長編の文芸作品の映像化にありがちな総集編的ダイジェスト感はいなめず、典型的な「哀れな女」を表面的になぞった印象も。
とくに前半か
>>続きを読む

山の音(1954年製作の映画)

3.5


川端康成の傑作長編を原作とした文芸作品。

老いへの恐れ、夢に現れる嫁への性的願望、また敗戦の心的影響などの重要な原作のテーマは思い切って捨てさられる。
そのぶん、菊子の不憫さや苦悩ばかりが強調され
>>続きを読む

あにいもうと(1953年製作の映画)

3.4


前半は、兄も妹も父もみな典型的な演技をくりかえすばかり(演出もまたおなじ)で停滞するが、彼らが本心をあらわにしてぶつかりあう後半はぐっとひきこまれる。
ねじれたかたちでしか愛情しかしめせない兄妹を森
>>続きを読む

稲妻(1952年製作の映画)

3.6


絵に描いたようなろくでもない兄妹関係のなかで、ひとり自分を持って生きる清子。
だが清子はものがたりの主人公というより、この醜い人間関係をみすえるカメラの「眼」の役割をになっている。
だからこそその「
>>続きを読む

おかあさん(1952年製作の映画)

3.2


戦後の復興期を貧しくも懸命に生きる一家のホームドラマ。

前半は年子役の香川京子のナレーションをはさみながら、やや駆け足でかたられる。
後半は花嫁衣裳のくだりなど印象的な場面もおおく引き込まれるが、
>>続きを読む

めし(1951年製作の映画)

3.3


林芙美子の未完の絶筆を原作にした一本。

倦怠期をむかえた夫婦の、とくに家事に疲れた妻の閉塞感が、その心理に寄り添う音楽とともに見事に表現されている。

その一方で、三千代も里子も原作にくらべるとや
>>続きを読む

病院坂の首縊りの家(1979年製作の映画)

2.7


市川崑と石坂浩二による金田一耕助シリーズの最終作。

複雑な人物関係のわりには見とおしよくまとめられているが、無理やりな設定やなおざりな演出が目につき興をそぐ。
告白されるご都合主義としかいいようの
>>続きを読む

>|