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コラテラルのyokoのレビュー・感想・評価

コラテラル(2004年製作の映画)
5.0
夢はMAX無限大

なぜヴィンセント(Vincent,征服者の語源)はマックスに執着するのか!夢を追っているフリをしている自己欺瞞が許せないから。

昔はスタイリッシュな殺し屋のクライムストーリーだと思っていた。殺し屋と一般人の対決。冴えないタクシー運転手が殺し屋ヴィンセントに刺激されて男になる。しかし今の印象は、夢を諦めた殺し屋vs夢を追いかけているふりをしている人間、殺しの話というより自己欺瞞と夢の話なのではないか。私自身中年になりよりその実感が湧く。

だからヴィンセントはマックスが許せないのだ。自分は夢を諦めて殺し屋をしているのに、のうのうと夢を追いかけているフリをしているから。本当に夢を追いかけていればスルーするだろうし、諦めていても同じだろう。口封じで次のタクシーを探すのが一番手っ取り早いはず。彼はプロのはずなのに。

そう対人アクション、ガン捌きは素晴らしいのだが根本的にヴィンセントはプロとしては失格だろう。計画性が雑すぎる。

ジャズマンが賭けを持ちかけ、クイズに失敗し殺される。マックスが正解していても殺しただろと詰め寄るが、私の感想は殺さない、だ!彼はもう揺らいでいた。夢の話に答えが欲しかっただから賭けに乗った。ジャズマンが自己欺瞞で夢を語っているのか、真にジャズを愛しているのか。(ヴィンセントもジャズ好きそうだよね)プロなら賭けはしない。ただやれば良いだけ。

昔はラストマックスが勝てたのは単に映画的倫理観のオチに過ぎないと思っていた。今は、かつての自分、夢を追いかけているフリをしているマックスを見てヴィンセントが揺らいでしまったから負けたのだ。と思う。

俗に言うマックスが殺し屋に漢を触発されて女を守るため奮起したから勝てたのではなく、ヴィンセントが昔の自分のような自己欺瞞で夢を語るマックスに人間の部分を触発されて人間的弱さを外部に露出させた、閉じ込めていた弱い自分を認識してしまったから撃ち合いに負けたのだ。負けた、ではなく負けようとした、介錯されようとしていたようにも見える。

髪が白、スーツがグレーなのはもう夢を諦めて殺し屋になった時点で燃え尽きてしまったからだと思う。

ヴィンヴィンの最高傑作!!!

ちな原田眞人がカミカゼタクシーのパクリと騒いでいましたが、設定は拝借しているもののコラテラルの肝はドタバタタクシースプラッターではなく夢と自己欺瞞の擦り合わせの部分、それを今回見返して強くかんじた。
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