本拠地スプリングウッドで迎えた最終戦。フレディは爆散、エルム街の風紀は乱れきっていた。
街中に響く保護者の溜息、どこからか聞こえる「シリーズも終わりだな…」の声。無言で帰り始める観客達の中、往年の名殺人鬼フレディは独り廃屋で泣いていた。
かつてエルム街で手にした栄冠、喜び、感動、そして何よりも信頼できる製作スタッフ…それを今のハリウッドで得ることは殆ど不可能と言ってよかった。
「どうすりゃいいんだ…」
フレディは悔し涙を流し続けた。どれくらい経ったろうか、フレディはハッと目覚めた。どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい廃屋の感覚が現実に引き戻した。
「やれやれ、帰ってムヒを塗らないと。」
フレディは苦笑しながら呟いた。火傷でただれた体を立ち上げた時、フレディはふと気付いた。
「あれ…？お客さんがいる…？」
廃屋から飛び出したフレディが目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの死体だった。千切れそうなほどに体がサバ折りされ、地鳴りのように若者の悲鳴が響いていた。
どういうことか分からずに呆然とするフレディの背中に、聞き覚えのある断末魔が聞こえてきた。「ｺﾞﾎﾞｺﾞﾎﾞ…ｺﾞﾎﾞｵ」溺死寸前の声に振り返ったフレディは目を疑った。
「ジェ…ジェイソン？」
「なんだロリコン、居眠りでもしてたのか？」
「チャ…チャッキー？」
「なんだフレディ、勝手にマザコンホッケーマスクさんを起こしやがって。」
「マイケル・マイヤーズ…」
フレディは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた。
１番：チャイルド・プレイ
２番：スクリーム
３番：ハロウィン
４番：エルム街の悪夢
５番：１３日の金曜日
６番：ラストサマー
７番：ルール
８番：プロムナイト
９番：悪魔のいけにえ
暫時、唖然としていたフレディだったが、全てを理解した時、もはや彼の心に雲ひとつ無かった。
「取り締まる…取り締まるんだ！」
キャンディマンから鉤爪を受け取り、エルム街へ全力疾走するフレディ、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった…。
翌日、クリスタルレイクで仲間割れする２人が発見され、ロリコンとマザコンは静かにフェードアウトした。そんな映画です。
