千年女優

明日の記憶の千年女優のレビュー・感想・評価

明日の記憶(2005年製作の映画)
3.5
広告代理店の営業部長で、仕事では大手とのクライアント契約を成立させプライベートでは娘の結婚を控える佐伯雅行。公私ともに充実の時を迎える49歳で残酷にも若年性アルツハイマーと診断された彼が、生き甲斐であった仕事を辞めざるをえなくなって、妻の枝実子のサポートを受けながら病気と必死に向き合う様を描いたドラマ映画です。

広告代理店社員から小説家に転身した荻原浩の山本周五郎賞受賞小説を、白血病の闘病経験から共感を抱いて映画化を熱望した渡辺謙の主演、彼の指名でメガホンを握った堤幸彦の監督で映画化した作品で、誰もが陥りうる苦難の物語が観客の感動を呼んで22億円の興行収入を記録して、日本アカデミー賞では最優秀主演男優賞を受賞しました。

もとより原作がドラマティックな物語の上、意気込みから力の入った渡辺謙の演技に絶頂期の堤幸彦の奇を衒った演出が重なって、作品としてはやや過剰な印象を覚えます。それでもともすれば独りよがりになってしまいそうなところを、妻を演じる樋口可南子の実直な演技が物語と作品の両面で支えていて、その献身に心を打たれる一作です。
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