コータ

祇園囃子のコータのレビュー・感想・評価

祇園囃子(1953年製作の映画)
4.7
芸妓・美代春(木暮実千代)のもとへやって来たあどけない少女・栄子(若尾文子)。
淋しい身寄りのない女が、汚れた世界の地に根を下ろし、共にたくましく生きていこうとする物語。女性を描く映画作家・溝口健二の代表作でもある。

ずっと見たかった溝口健二監督の名作。若尾文子、木暮実千代出演。
いつも妖艶なイメージの若尾文子が、本作では登場からあどけない印象を与える。僕が知ってる若尾文子出演作の中でも彼女が一番若かった頃の作品だと思う。

しかし何と言っても、本作は主演・木暮実千代の魅力に尽きる。芸妓の誇りと哀しみを見事に演じきった彼女の存在が、この映画の出来上がりを支えている。


溝口監督特有のワンショットの長回しを多用し、クローズアップを使用しない手法。これが俳優の演技力を最大限に引き出し、登場人物の優しさ、哀しさがまっすぐ胸を打つ。またそれが何気ないシーンにも緊張感を与え、見る者をグッと引き込ませる効果を生む。

これを可能にしたのが名カメラマン・宮川一夫の職人芸。白と黒の微妙なコントラストが美しく、ラスト付近の祇園祭の様子をとらえたショットではとりわけそれが際立つ。

「今日からあんたの、美代栄ちゃんの旦那は私や」

酒を飲まされ、身体を触られ、押し倒され、身を汚され…
好きでもない相手とも、親子ほど年の離れた相手とも…
芸妓の仕事。気に入らない客にもへつらって、お金を頂かなければならない。そうしないと、舞妓になるための着物すら買えないのだから。

性搾取や日本社会のジェンダー構造といった問題を扱った作品ではあるのだが、硬派な社会派作品というよりは、よくできた芸術映画といった仕上がり。映画として面白い。
同監督が戦前に製作した『祇園の姉妹』と見比べてみたい。同じくアマプラで配信中とのことで、早速リストに入れておいた。
コータ

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