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トスカーナの贋作のodyssのレビュー・感想・評価

トスカーナの贋作(2010年製作の映画)
2.5
【アイデア倒れ】

アイデアとしては悪くない映画だと思うのですが、どうもうまくいっているとは思われない。

主人公二人は中年ながらハンサムと美女だし、イタリアのトスカナ地方が舞台となれば背景の美しさも十分かと期待したのですが・・・この背景にまず問題があるのではないでしょうか。

むろん、日本の『アマルフィ』みたいな観光映画を作る気はキアロスタミ監督にはなかったでしょう。しかしそれにしても、英国から講演にやってきた作家が子供と二人暮らしのフランス人女性に誘われてでかけるという設定であるのだから、そこに観光的な要素が入り込むのは自然なことはないか。で、実際に筋書き的にもそういうふうになっているはずなのですが、どうも風景だとかが楽しむような映画にはなっていない。なんか建物がごちゃごちゃしているし、建物もあまり美しくは撮れていない。監督は意図的にそうしたのでしょうか?

また、男女二人の会話も、虚構と現実の境目をお互い見定めながら、エロティックかつコミカルに繰り広げられるのかと思いきや、なんかお互い飽きが来た本当の中年夫婦みたいなやり取りになっています。こういうのって、つまらない。だって実際は初対面なんだから、お互いが新鮮なはずだし、そこから来るエロスの表現が、言葉だとかしぐさだとかにもっとはっきり出ていないとおかしいと思う。

最後は暗示的にシャワーの水の音で終わります。だけど、こういう暗示をずっと早くに出しておくべきだった。見ていて、本物の中年夫婦同士の会話に付き合わされたみたいで、ちょっと疲れました。
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