トスカーナの贋作の作品情報・感想・評価

「トスカーナの贋作」に投稿された感想・評価

ひかり

ひかりの感想・評価

4.8
私の人生エッセンス映画の2本目になった。
ジュリエットビノシュを見て、職業俳優の意義を再確認できて嬉しい。
カメラワークが小津映画みたい。アッバスキロアスタミ監督の1番お気に入りの小津映画って何だろう? 知りたいし、分かったら見たい。
何からしく無いけど キアロスタミ監督作品。


…無茶苦茶難しかった…(-.-)

え?何々??
結果、本当の夫婦なの…???

…一見観客無用な作風で、古今東西、東方不敗?的 映画道に精通した人用の映画…(-.-)


キアロスタミ監督作品ってこんなんだったっけ…(*_*)

晩年の作品との事で襟元正して鑑賞したのに、個人的理解力乏しく、監督の伝えたい事が理解出来ず 残念な作品でした…(-.-)

…映画って難しいですね……(..)


でも、ロケーション映像は素晴らしかったです!😊
やはり自分はキアロスタミは後期の作品が特に好き。偽装夫婦たるものは、広義的には血縁主義の否定に近いものであり、ある意味カンヌでウケそうなお堅さなのだが、それをここまで良い意味で卑近にできているのは凄い。勿論そこに芸術的教養を忘れることはなく、都市の魅力も最大限に活かしている。一見何もない物語ではあるのだが、やはりキアロスタミ作品ではなにか人生の本質について考えさせられてしまうのだ。
knkne

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5.0
キアロスタミ晩年の傑作の1つ。
現実と虚構、本物と偽物とがそれぞれの境界を侵犯していく。行きずりの愛がいつの間にかそれぞれの形を変えていった。
存在するはずのない時間を埋め合わせるように、何でもない景色が色付けられ、空白は虚構の絵の具で美しく彩られていく。そうやってできた色は、形取られた絵は真作だろうか、贋作だろうか。
偽物の関係だからこそ言えることもあって、本物の関係では構築できぬ空気感もある。
もはや本人たちにはそんなことはどうでもよく、現実よりも濃密な虚構を、虚構よりも空疎な現実がクライマックスで頂点に達し、後ろで鳴り響く鐘が終焉を告げ、深い余韻を響き渡らせる。
もっとも、この関係自体を映画という虚構で構築するのも視点がやはり面白い。

また今作においてのスクリーン、あるいは視聴者である我々はしばしば反射する鏡としての役割を全うする。
レストランのシーンで化粧直しで口紅を塗ったり、イヤリングを付けたり、髪を直したりなど。席について口論になり、ジェームズが席を立った後も同じように鏡として使用する。
それと吃るのは愛が溢れているから、という解釈はなるほど、と感じた。

静謐なまま、淡々と物語が進むのも心地がよく、物事の真贋を問う論争も興味深く、キアロスタミ作品ではお馴染みのドライブシーンから覗く街の喧騒や人々の営み、発される言葉も杉並木も美しく、夜に何度も観たくなる一作だろうし、なんだか昔交際していた人との関係を思い出した。
その人もまた、何でもない景色を色付けて、当時霞んでいた僕の視界に彩りを加えてくれた人だった。
nicoden

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3.8
大部分が言い争いなので、ストレスが溜まるが、途中のおじさんの助言はシンプルでキアロスタミらしい。
贋作にも真実がある。最後は少し切ない。
久方振りのキアロスタミ。
『本物よりも本物らしい贋作』と言う言葉に男女の物語。

途中本当の夫婦なのか、愛人なのか、といった疑問も沸きましたが、冒頭の子供の言葉や著作のきっかけから、彼等が偽夫婦だと云う事に確信が持てます。
偽の夫婦だからこそ、互いに溜め込んだ鬱憤を忌憚無く言い合える、そんなキアロスタミの視点には脱帽でした。

作品としては波風は穏やかなものの、主演二人の目、表情、仕草といった演技が素晴らしく、飽きずに見られる良作でした。
アッバス・キアロスタミのフランス・イタリア映画。イランでの映画製作が難しいのだろう。贋作というキーワードにどっちなんだという感じで男と女の恋愛模様を描く。ほとんど二人芝居の感じだ。台詞が途中で変わるので最初と惑うが、そのまんまラストまで続く。結局どっちか特定せず終わる。
もしかしたら本当に夫婦で倦怠期なんで知らない者同士を演じてみたらこうなったのか。それとも元々愛人で別れそうな関係を修復させようとしているのか。それともプレーなのか???女と男の想いがズレていき奇妙な雰囲気になる、それでも人生は続くんだとキアロスタミの過去の映画のタイトルが思い起こされる。個人的には、夫婦だったんじゃないかと思います。小津安二郎のファンだけあってバストショットの映像が効果的だ。ジュリエット・ビノシュの男に対する微妙な心の動きがよくわかる。今年は、日本で映画「ライク・サムワン・イン・ラブ」撮ったそうで見逃しているが、そのうちみたいですね。
白

白の感想・評価

5.0
いつ一方が終わり、いつ他方が始まったのか、誰にも分からない。まるで夏が秋に変わっていくときのように、西に傾いた太陽が影を投げかけるときのように。
揺らぎ歪んだ物語に終止符を打つために突如投げかけられる無情な冷たさが、一切を見逃さずにいた者を希薄に不意打ちする。
イタリアの小さな村を舞台に、ふとしたことから偽の夫婦を演じることになった男女の虚実を描く。

主演にジュリエット・ビノシュと、本作がスクリーン・デ ビューとなるオペラ歌手のウィリアム・シメルを迎え、異色の恋愛ドラマを撮ったイランの巨匠アッバス・キアロスタミ。

そのカメラは、持ち味である長回しロングショットを封じ、バストショットの切り返しで男女の会話劇を映し出し、役者との距離をグッと縮める。

イギリス出身の作家が村の講堂で講演を開く。自著「贋作 本物より美しき贋作を」の出版を記念したもので、彼の言葉に共感した女性が後日、経営するギャラリーで作家と再会する。

彼女は、面白い場所に連れて行ってあげると彼を誘い、「🔶9時🔶までに戻らないと列車に遅れるから」と言いつつも誘いに乗る作家。

男はジョークを言い、女は妹を語る。男は本物と贋作について熱く語り、女は息子を語る。

矢継ぎ早に言葉を投げるのではなく、質問すると相手の答えを待ち、持ち上がった話題に対して互いが忌憚なく意見し合う。

「子供の名言に大人は耳を貸さないが、同じことを哲学者や作家が言うと感心する」

「本物もモデルの美女の複製だ」

もう喋りっぱなしである。2人は友人でも恋人でもない。知り合ったばかりの2人が何年分もの言葉を交わすようで、その会話が実に面白い。

カフェの女主人から「いい旦那さんね」と言われた事がきっかけで、夫婦を演じる事になる後半が更に面白い。

記念日に眠り、オシャレに気付かない夫に女は怒り、男は居眠り運転を責める。その口論は、あたかも本当の夫婦であるかのようだが🔶贋作🔶の夫婦だ。

「トスカーナの贋作」はモナリザと偽夫婦のダブル・ミーニングなんだろう。

「本物より美しき贋作を」

本当の夫婦ではないからこそ言える事もある。男はそっと肩に手を乗せ、女はそっと肩にもたれた。そんな2人に夜はこない。抱擁もキスもない9時までの夫婦ゲームに引き込まれた。
あまりに良すぎて二回連続で観賞した。初絡みの英国人作家と仏人女性が宛もなくトスカーナ観光を続けるうちに何故か自分達を熟年夫婦と仮定して会話をし始める…。粗筋だけだと意味不明。そこにキアロスタミの暖かみのある静謐な映像が重なって、まるで種明かしの無いマジックショーを見てるみたいな困惑と好奇心がぐわんぐわんと心を揺さぶってくる不思議な心地。好き。
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