冷蔵庫とプリンター

トスカーナの贋作の冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

トスカーナの贋作(2010年製作の映画)
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 フィクションと現実を脱構築する独自の手法を切り開いた巨匠キアロスタミの2010年代を代表する一作。素朴なイランの風景から遠く離れて、舞台はイタリア。本物と贋作、過去と現在、男と女などといった複数の対立軸とのポリフォニーが、より知的な印象をもたらしている。
 てっきり前述のフィクションと現実との関係性についての理論的な補完を目指した映画かと思っていたが、どうもやりたいのはキアロスタミなりの『イタリア旅行』らしい。無関心な夫/愛を強く求める妻という使い古されたレトリックがいまいち微妙な気もするが、総じて良い映画だった。