再鑑賞。
たった72分で温かい気持ちになれて、小津作品は改めて素んっっ晴らしいな。
小津さんが戦地から戻って撮った戦後第1作目。東京の長屋を舞台にした、ほのぼのとユーモラスな人情劇。殺風景な東京が戦後を物語る。
戦後の復興間もない東京、長屋で占い師をしている男(笠智衆)が迷子の孤児を拾ってきてしまう。クジ引きで負け、夫と子を亡くし長屋でひとりで荒物屋を開いているおたね(飯田蝶子)が子供を預かることに。最初は面倒だからと嫌がっていたおたねも、やがて子供に情が湧いていく…
飯田蝶子さんのいかにも近所のオバちゃんて感じがいいのです。口うるさくて正直で。
海岸で子供を置いて逃げようと走るおたねを少年が追いかけるシーンや写真屋のシーンがユーモラス。長屋の人々が集まって、茶碗を叩きながら口上を唄う笠智衆さんが素敵すぎる。
口は悪くても根は優しいおたねさんと、温かく見守る長屋の人々に“情”を思い知る。
みんなが自分のことしか考えていないと、戦争によって変わってしまった日本人を嘆くおたねさんのセリフや、ラストに上野の戦争孤児たちを映すのは、小津さんの戦争への憤りなのだろう。