シャンタル・アケルマンのミュージカルということで、どこかでヒネリがあるだろうと身構えていたけれど、結局、ヒネリがないことがヒネリだった。ヒネリというか、観る者に映画を観ていることを意識させるようなポイントはいくつかあった。たとえば、キレがいいとは言い難いミュージカル場面で、歌い踊る人々が次々とカメラに目線を送ること。あるいは、ショッピングモールに人が溢れていて、登場人物たちが人波に押されて離ればなれになってしまうこと、など。はたまた、地下のショッピングモール内から、ラスト、唐突に屋外に出ることもそうだ。
なお、オープニングのタイトルバックで数々の靴が画面を横切るのは『シェルブールの雨傘』のオープニングかな。運命論的なストーリー展開もジャック・ドゥミ的と言えなくもない。
